記者会見、取材、番組づくり……どれも従来の慣習からの脱却が必要だ
2020年04月05日
新型コロナを巡る状況は、日に日に深刻化している。ウイルスとの戦いはこれから長期に渡るであろう。それに向けて我々も従来のライフスタイルを変更することが余儀なくされている。
私の勤務する大学においても、新学期の講義は4月下旬に開始することになった。さらに、それらはすべてインターネットを介したオンラインで行うことが基本である。オンライン講義に関しては以前からそのメリットは十分認識されていたものの、ネット環境が悪い学生はどうする、やはりお互いの顔を見ながら双方向で行わないと内容が十分伝わらない、などの批判があり、完全実施には踏み切れていなかった。
しかし、今や細かいデメリットを気にしている状況ではなくなった。これこそわずか1カ月以内に、世界中の大学がオンライン講義化に踏み切った理由である。会社における在宅勤務への流れも同じであろう。業種によって事情はかなり異なるが、打ち合わせや会議のほとんどは本来実際に顔を突き合わせて行う必要はない。オンライン化は、ウイルス感染防止にととまらず、経費削減や時間節約など、現在の状況でなくとも多くのメリットがある。
さて、そのような観点に立つと、現在の報道方法には多くの矛盾がある。しかもそれは場合によっては、まさに危機的な問題を生み出しかねず、即刻是正する必要がある。以下、具体的に提案してみたい。
政府あるいは都道府県レベルでの会見がほぼ毎日テレビ中継されるようになった。それらの多くは、感染を避けるため不要不急の外出を自粛し、人混みを避けることを呼びかけている。しかしながら、その会見会場には多くの報道関係者が詰めかけており、発表者の口元には10本程度の各報道機関のマイクが突きつけられている。しかも発表の周りには、関係者と思しき人々がずらっと並んでいる。あえて通常のカラオケ以上の人混みを作り出しているとしか思えないこの光景は矛盾である。マスクを着用するようになったのもごく最近のことでしかない。
私の印象では、マスコミ関係者はオンライン対応に遅れている。最近、ある問題について数件の取材を受ける機会があったが、まず直接会って話を聞きたいと打診される。おそらくこれは記者として入社以来、正確な取材をする上でのイロハのイとして叩き込まれてきたのだろう。しかし、この状況ではその常識こそ直ちに変えるべきである。オンラインでは十分な質疑ができないという意見も聞く。自分が本当にそうなのであれば、それが可能な若手記者に交代すべきだ。
外出自粛要請が出た週末に出歩く若者への取材映像が繰り返し流れている。また、感染拡大している外国から帰国した人々が、成田空港でインタビューされる姿も報道されている。特にワイドショーなどでは、「このような若者が無症状のまま感染拡大させている。もっと自覚すべきだ」とか「空港から公共交通機関で帰宅してしまっていないのか」などといった懸念が述べられる。確かにそうかもしれない。
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