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新型コロナで露呈した報道関係者の甘いリスク管理意識

記者会見、取材、番組づくり……どれも従来の慣習からの脱却が必要だ

須藤靖 東京大学教授(宇宙物理学)

 新型コロナを巡る状況は、日に日に深刻化している。ウイルスとの戦いはこれから長期に渡るであろう。それに向けて我々も従来のライフスタイルを変更することが余儀なくされている。

 私の勤務する大学においても、新学期の講義は4月下旬に開始することになった。さらに、それらはすべてインターネットを介したオンラインで行うことが基本である。オンライン講義に関しては以前からそのメリットは十分認識されていたものの、ネット環境が悪い学生はどうする、やはりお互いの顔を見ながら双方向で行わないと内容が十分伝わらない、などの批判があり、完全実施には踏み切れていなかった。

拡大メディア自身の感染症対策はどうなっているのか
 これらの批判には一理ある。しかし、100点満点の方式があるはずはなく、全体としてのメリットが局所的なデメリットを十分上回るならば、仮に80点であっても実行したほうが良いはずだ。しかし現実社会では、それがうまく進まない。これこそまさに「ゲーム理論」の(自明な)結論である。

 しかし、今や細かいデメリットを気にしている状況ではなくなった。これこそわずか1カ月以内に、世界中の大学がオンライン講義化に踏み切った理由である。会社における在宅勤務への流れも同じであろう。業種によって事情はかなり異なるが、打ち合わせや会議のほとんどは本来実際に顔を突き合わせて行う必要はない。オンライン化は、ウイルス感染防止にととまらず、経費削減や時間節約など、現在の状況でなくとも多くのメリットがある。

 さて、そのような観点に立つと、現在の報道方法には多くの矛盾がある。しかもそれは場合によっては、まさに危機的な問題を生み出しかねず、即刻是正する必要がある。以下、具体的に提案してみたい。

記者会見はオンライン化すべきだ

 政府あるいは都道府県レベルでの会見がほぼ毎日テレビ中継されるようになった。それらの多くは、感染を避けるため不要不急の外出を自粛し、人混みを避けることを呼びかけている。しかしながら、その会見会場には多くの報道関係者が詰めかけており、発表者の口元には10本程度の各報道機関のマイクが突きつけられている。しかも発表の周りには、関係者と思しき人々がずらっと並んでいる。あえて通常のカラオケ以上の人混みを作り出しているとしか思えないこの光景は矛盾である。マスクを着用するようになったのもごく最近のことでしかない。

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筆者

須藤靖

須藤靖(すとう・やすし) 東京大学教授(宇宙物理学)

東京大学大学院理学系研究科物理学専攻教授。1958年高知県安芸市生まれ。第22期・第23期日本学術会議会員。主な研究分野は観測的宇宙論と太陽系外惑星。著書に、『人生一般二相対論』(東京大学出版会)、『一般相対論入門』(日本評論社)、『この空のかなた』(亜紀書房)、『情けは宇宙のためならず』(毎日新聞社)、『不自然な宇宙』(講談社ブルーバックス)などがある。

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