流行を抑えるうえで重要だったのは都市間移動の制限
2020年04月15日
しかし、ロックダウンは諸刃の刃だ。長期に渡るロックダウンは、ストレスに伴う鬱や家庭内暴力、運動不足による健康阻害などの副作用を引き起こす。実際フランスでは家庭内暴力の急増が問題となり、ホテルを2万泊分確保して被害者の救済に当てたほどだ。ロックダウンによる経済停滞が大量失業と貧困を生む問題も見逃せない。長期化するほど病死以上の犠牲者を生み出すだろう。貧困が新たな戦争を引き起こすかもしれない。
だから、ロックダウン対策のうちの何から外して良いのか、何を続けなければならないのか、各国が模索を始めている。これを考えるための数字は既にある(たとえばイタリアについてはここ)。当初は探すのが困難だった年齢分布や地域別データも出るようになった。加えて、欧州ではランダムサンプリングによる感染の実態調査が始まっている。
にもかかわらず、それらを総合的に考察した論考が出ていない。そこで私なりに解釈してみることにした。週末の片手間で手に入る範囲の数字だし、専門から遠いが(というかリアルタイムデータを反映した疫病対策という分野に専門家はいるのだろうか?)、議論の叩き台ぐらいにはなるはずだ。
今までの議論で決定的に足りないのは各国内の地域別の数字の分析だ。例えばイタリアが突出しているというが、実は患者が集中しているのは北部で、南部はドイツ平均並みであり、ローマですら、ドイツのバイエルン州よりマシな状況なのである。そのあたりをまとめると、4月13日の段階で以下の表のようになる。
つまり、イタリア北部から、イタリア国内よりも欧州の大都市に広がったのだ。いま住民に外出禁止を求めている流行国の最大都市のうち、流行を防げたのはローマだけだ。
イタリア国内では、感染の発覚した翌々日には感染地域内外の人の移動を制限した。北イタリアからの訪問者を14日間の隔離におく州もその週のうちに現れた。3月1日には鉄道などの交通機関の消毒を強化し、3月8日にはロックダウンの中でも街と街の間の移動をとりわけ厳しく取り締まった。しかし、EUの「域内移動自由」の原則があったために国外への出国は自由で、出国先の国では、隔離も何もしないのが普通だった。欧州各国が国境管理に乗り出したのは3月中旬だ。
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