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欧州のデータから日本がとるべきコロナ対策を考える

流行を抑えるうえで重要だったのは都市間移動の制限

山内正敏 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員

拡大人がほとんどいなくなったローマのフィウミチーノ空港の出発カウンター=2020年3月16日、河原田慎一撮影
 イタリアを皮切りに欧米がコロナ対策のロックダウン(都市間移動、市内移動、経済・教育活動、集会、外出そのものなど各種の制限)を始めて1カ月になる。イタリアに至っては既に1カ月半だ。その成果かどうか分からないが、イタリア、スペインでは新規の感染者数・死亡者数ともにピークに達し、オーストリアとノルウェーでも流行の加速が起こらずに、この2週間ほどは新規入院者が順調に減り続け病院は余裕を取り戻しつつある。

 しかし、ロックダウンは諸刃の刃だ。長期に渡るロックダウンは、ストレスに伴う鬱や家庭内暴力、運動不足による健康阻害などの副作用を引き起こす。実際フランスでは家庭内暴力の急増が問題となり、ホテルを2万泊分確保して被害者の救済に当てたほどだ。ロックダウンによる経済停滞が大量失業と貧困を生む問題も見逃せない。長期化するほど病死以上の犠牲者を生み出すだろう。貧困が新たな戦争を引き起こすかもしれない。

 だから、ロックダウン対策のうちの何から外して良いのか、何を続けなければならないのか、各国が模索を始めている。これを考えるための数字は既にある(たとえばイタリアについてはここ)。当初は探すのが困難だった年齢分布や地域別データも出るようになった。加えて、欧州ではランダムサンプリングによる感染の実態調査が始まっている。

 にもかかわらず、それらを総合的に考察した論考が出ていない。そこで私なりに解釈してみることにした。週末の片手間で手に入る範囲の数字だし、専門から遠いが(というかリアルタイムデータを反映した疫病対策という分野に専門家はいるのだろうか?)、議論の叩き台ぐらいにはなるはずだ。

都市間移動の制限が最優先

 今までの議論で決定的に足りないのは各国内の地域別の数字の分析だ。例えばイタリアが突出しているというが、実は患者が集中しているのは北部で、南部はドイツ平均並みであり、ローマですら、ドイツのバイエルン州よりマシな状況なのである。そのあたりをまとめると、4月13日の段階で以下の表のようになる。

拡大

 つまり、イタリア北部から、イタリア国内よりも欧州の大都市に広がったのだ。いま住民に外出禁止を求めている流行国の最大都市のうち、流行を防げたのはローマだけだ。

 イタリア国内では、感染の発覚した翌々日には感染地域内外の人の移動を制限した。北イタリアからの訪問者を14日間の隔離におく州もその週のうちに現れた。3月1日には鉄道などの交通機関の消毒を強化し、3月8日にはロックダウンの中でも街と街の間の移動をとりわけ厳しく取り締まった。しかし、EUの「域内移動自由」の原則があったために国外への出国は自由で、出国先の国では、隔離も何もしないのが普通だった。欧州各国が国境管理に乗り出したのは3月中旬だ。

 ここで参考になるのは

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筆者

山内正敏

山内正敏(やまうち・まさとし) 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員

スウェーデン国立スペース物理研究所研究員。1983年京都大学理学部卒、アラスカ大学地球物理研究所に留学、博士号取得。地球や惑星のプラズマ・電磁気現象(測定と解析)が専門。2001年にギランバレー症候群を発病し1年間入院。03年から仕事に復帰、現在もリハビリを続けながら9割程度の勤務をこなしている。キルナ市在住。

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