メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

オンライン授業の利点とコロナ後の大学のあり方

通信制大学の経験から見えてくるもの

鬼頭秀一 星槎大学副学長、東京大学名誉教授

拡大通信制大学である星槎大学の4月11日に行われたオンラインによる入学式の様子
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に伴い、多くの大学が開講時期を連休明け辺りにまで延期し、オンライン授業の導入に踏み切っている。オンライン授業の準備が既にできていた一部の大学を除き、学生も教員も大変な負担を強いられて、混迷状態にある。

 私が勤務する星槎大学は通信制課程を基盤とし、「誰でも、いつでも、どこでも学べる大学」「生涯学習ニーズへの対応」「地域社会への積極的な貢献」の3つを目標としている学生定員3980人の大学である。オンライン授業は普通に行われてきており、学部教育では北海道から沖縄まで全国20カ所のサテライトのうち10カ所程度をつないでテレビ会議システムで授業を行なっていた。近年では、Zoomというテレビ会議システムを使い、海外在住学生も含めて遠隔地にいる学生が一緒にスクーリング授業を受け、ディスカッションすることは日常的になっている。

 そのような我々が新型コロナにどのように対峙し、ポストコロナ時代の大学をどのように見通しているかを報告したい。

自宅受講だけで資格を取得できるように準備していた

 近年、私たちが力を入れてきたのは、学生がサテライト会場に来ることなく、自宅で受講するだけで卒業して学士を取得したり、教員免許や社会福祉士などの資格を取得したりできるようにする準備である。それは、地理的条件に限定されずに学びの機会を保障するべきであるという考え方から生まれた方針だった。

拡大スタジオ録画型オンデマンド授業

 元々は、サテライト会場で実施するスクーリングで教員から対面で直接学べる機会を用意するのは重要であると考えていた。しかし、現在では情報通信技術(ICT)のクオリティも高くなり、スタジオで事前に録画した動画をいつでも視聴できる「オンデマンド受講」や、テレビ会議システムを使い双方向のやりとりができる「オンライン授業」などにより、対面での学び以上の教育効果が得られることが分かってきたのである。

 例えば、多人数を対象とした通常の授業では、なかなか一人一人の学生の様子を見ながら授業するのは難しい。大きな教室の後ろの方に学生が固まって座ってしまうということもありふれた光景である。しかし、オンライン授業にして学生がそれぞれ自分の端末からテレビ会議システムに入ると、教員から学生の受講の表情を一覧できるだけでなく、学生にとっても教員と画面上ではあるが直接向きあって授業を受けられる。また、学生同士もお互いに顔が見えて一体感が得られる。こうして教育効果が上がることが、実際に学生たちに調査して確かめられた。

 また、テレビ会議システムでは、いくつか部屋を分けて数名のグループワークを行うことも可能であり、ICTの最新技術を有効に利用することで、今までの対面授業ではできないような授業展開も可能になってきた。

 星槎大学には沖永良部島にサテライトがあり、丹波篠山にあるコミュニティカレッジとも連携している。そして、北海道のいくつかの地域との連携も現在模索している。離島や過疎の村にいても受講できる状況を整えようとする延長線上に、自宅だけで学べるシステム作りがあった。そのような新たな改革の準備をしていたところで、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが起きたのだ。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

鬼頭秀一

鬼頭秀一(きとう・しゅういち) 星槎大学副学長、東京大学名誉教授

1951年名古屋市生まれ。東京大学大学院理学系研究科博士課程単位取得退学。東京大学大学院新領域創成科学研究科教授を経て、2014年から星槎大学教授。専門は環境倫理学・科学技術社会論。現場でのフィールドワークを踏まえて環境にかかわる理念に関する研究を行っている。著書に『自然保護を問いなおす』(ちくま新書)など。