概念がわかりにくく測定も困難、もっとわかりやすい指標で今後の見通しを示してほしい
2020年05月01日
「8割」には感染症数理モデルによる根拠があることは理解できる。感染症対策には数理モデルによる分析が欠かせないこともわかる。しかし、接触とはどういう状態を指し、それをどうやって数えるのかがわからない。調べてみると、これは数理モデルの中に出てくる抽象的な概念であり、実際の社会での「接触」をどうやって測定するかということ自体が研究課題であることがわかった。だったら、目標になる資格がないようなものではないか。
おそらく「せいいっぱい」とお願いするよりも「接触8割削減」と言う方が事態の深刻さを多くの人に理解してもらう効果はあったろうとは思う。しかし、その効果は最初だけだ。測定困難なものを目標にするという「非合理事態」は早く解消すべきである。
緊急事態宣言が出てから、都心の主要駅で人の流れが大幅に減ってきたことが何度かニュースになった。これで「接触」も大幅に減ると、当初は私ものんきに考えたものだ。
内閣官房の新型コロナウイルス感染症対策のホームページには、東京駅や新宿歌舞伎町など主要駅周辺における人の流れについて、宣言日の4月7日、そして1月18日~2月14日の「感染拡大以前」の平均との比較が%で示されている。例えば4月28日の東京駅は、7日の52.5%減、「以前」の75.4%減である。新宿歌舞伎町は42.6%減と64.4%減。休日だった29日はさらに大きく減っている。
こうした数字を見れば、私たちは相当にがんばっていると思う。ところが、都心がガラガラになったら、今度は住宅地のスーパーや商店街が混雑していると問題視されるようになった。日中、都心に人が行かなくなっても、人が消えるわけではない。そのぶん、自宅にいる人が増えているわけだ。学校も休みだから、家族全員が家にいて、三食用意するとなれば食材もたくさんいる。そりゃ住宅地のスーパーが混むのも当然ではないか。
いや、もちろん混んでいる状態は望ましくないので、混まないように工夫することは必要である。しかし、「接触8割削減」とは都心から人がいなくなりさえすればいいというものではないということにスーパーの混雑で気づかされたわけである。
内閣官房HPをよく見ると、「人流の減少率」のところに「これらのデータはエリアの中の人口の増減を見るもので、接触量を見るものではありません」と注意書きがある。では接触量はどうやって見るのか
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください