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「接触8割削減」目標は5月6日でやめるべき

概念がわかりにくく測定も困難、もっとわかりやすい指標で今後の見通しを示してほしい

高橋真理子 朝日新聞科学コーディネーター

拡大新型コロナウイルスの感染拡大を受けた外出自粛や店舗の臨時休業で人通りが減った新宿駅西口=2020年4月12日午後、東京都新宿区、橋本幸雄撮影
 緊急事態宣言が出されてから、私たちは「接触を8割削減するための外出自粛」を求められてきた。いったい全体、人との接触をどうやって測定するのかとモヤモヤしながらも、私もせいいっぱい人に会わないようにしてきた。しかし、何割削減できたのか自分ではさっぱりわからない。

 「8割」には感染症数理モデルによる根拠があることは理解できる。感染症対策には数理モデルによる分析が欠かせないこともわかる。しかし、接触とはどういう状態を指し、それをどうやって数えるのかがわからない。調べてみると、これは数理モデルの中に出てくる抽象的な概念であり、実際の社会での「接触」をどうやって測定するかということ自体が研究課題であることがわかった。だったら、目標になる資格がないようなものではないか。

 おそらく「せいいっぱい」とお願いするよりも「接触8割削減」と言う方が事態の深刻さを多くの人に理解してもらう効果はあったろうとは思う。しかし、その効果は最初だけだ。測定困難なものを目標にするという「非合理事態」は早く解消すべきである。

主要駅周辺の人出は大幅に減ったが

 緊急事態宣言が出てから、都心の主要駅で人の流れが大幅に減ってきたことが何度かニュースになった。これで「接触」も大幅に減ると、当初は私ものんきに考えたものだ。

 内閣官房の新型コロナウイルス感染症対策のホームページには、東京駅や新宿歌舞伎町など主要駅周辺における人の流れについて、宣言日の4月7日、そして1月18日~2月14日の「感染拡大以前」の平均との比較が%で示されている。例えば4月28日の東京駅は、7日の52.5%減、「以前」の75.4%減である。新宿歌舞伎町は42.6%減と64.4%減。休日だった29日はさらに大きく減っている。

拡大支払い機や袋詰めの場所で混み合いがちなスーパー=2020年4月24日午後、福岡市東区、吉本美奈子撮影

 こうした数字を見れば、私たちは相当にがんばっていると思う。ところが、都心がガラガラになったら、今度は住宅地のスーパーや商店街が混雑していると問題視されるようになった。日中、都心に人が行かなくなっても、人が消えるわけではない。そのぶん、自宅にいる人が増えているわけだ。学校も休みだから、家族全員が家にいて、三食用意するとなれば食材もたくさんいる。そりゃ住宅地のスーパーが混むのも当然ではないか。

 いや、もちろん混んでいる状態は望ましくないので、混まないように工夫することは必要である。しかし、「接触8割削減」とは都心から人がいなくなりさえすればいいというものではないということにスーパーの混雑で気づかされたわけである。

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筆者

高橋真理子

高橋真理子(たかはし・まりこ) 朝日新聞科学コーディネーター

朝日新聞 科学コーディネーター。1979年朝日新聞入社、「科学朝日」編集部員や論説委員(科学技術、医療担当)、科学部次長、科学エディター(部長)などを務める。著書に『重力波 発見!』『最新 子宮頸がん予防――ワクチンと検診の正しい受け方』、共著書に『村山さん、宇宙はどこまでわかったんですか?』『独創技術たちの苦闘』『生かされなかった教訓-巨大地震が原発を襲った』など、訳書に『ノーベル賞を獲った男』(共訳)、『量子力学の基本原理 なぜ常識と相容れないのか』。

 

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