「接触8割削減」は目的ではなく手段。対策の効果を判定できる指標が必要だ
2020年05月04日
緊急事態宣言が延長されそうだ。全国民が新型コロナの新規感染者数に毎日関心を寄せている。それが実数でない、検査を増やせという批判も絶えない。楽観論と悲観論が錯綜するのは、福島原発事故のときと似ている。
1人の患者が何人にうつすかという再生産数の初期値「基本再生産数(R0)」が約2.5というが、この値は不確実性もある。それを承知のうえで数理モデルをつくり、対策を打ち出す。感染者数が減ったかどうかで対策の効果を判定し、効果不十分なら対策を強化し、効果があれば、新規感染者を減らし続けられる程度に対策緩和してもよい。これが、個体群生態学でいう「順応的管理」である。
日本のPCR検査は感染者数を知るためでなく、感染者と濃厚接触した人から2次感染者を発見し、さらなる感染を抑えるための手段である。検査者が国民の無作為抽出ではないから、検査陽性率を見ても全貌はわからない。死亡者数は大いに参考になるが、感染してから亡くなるまでだいたい2-3週間かかるとすれば、緊急事態宣言が出た4月7日以後の成果はまだ見えない。
順応的管理は、できるだけ直近の評価指標が必要で、時間差があるほど対策変更が後手に回る。感染から発症まで5日程度というから、上記検査とは別に感染者と治癒者が陽性となる抗体検査を無作為標本で調べる手はあるかもしれない(論座の塩原俊彦の論考、ただし非感染者でも抗体検査で陽性と判定される「偽陽性」の可能性に注意すべきだ。偽陽性率が5%なら、真の感染率が0でも抗体陽性率は5%と出てしまう)。あるいは年齢、性別、職業、住所等の検査者の頻度分布と住民全体のそれとのずれを補正するなど、検査が無作為でないことを精査すれば、真の感染者数をある程度推定できる可能性もある。そうすれば、数日後には8割抑制等の対策の効果が検証できる。
専門家委員会が「オーバーシュート」と呼ぶのは
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