かつて解決困難とされた「空白の半年」問題が今は消滅しつつある
2020年05月08日
これは以前から議論されてきた問題で、その長期的なメリットや実施のための課題は出尽くしている感があるが、今回また、多くの人々から賛否両論の再確認が行われている。
そもそも以前の議論は大学が言い出したもので、多くの国々で実施されている学校年度9月開始を採用する方が、学生の留学(日本人学生の海外留学と外国人留学生の受け入れ)、および外国の大学の卒業生を受け入れる企業にとって好都合であるということであった。しかしその実施には多くの課題があり、それをクリアするための膨大な作業がはたしてメリットに見合うかということで活発な議論が交わされた。未だに実現していないのは、やはり解決すべき課題が重すぎるからだろう。
学校年度9月開始に移行する場合の主要な課題を考えてみる。移行のやり方によっては、児童生徒の学費や学校経営の問題が起きる。しかしこれは政府が責任を持って支援・補償すれば解決できる。むしろ問題は現場にのしかかる課題である。その中には、財政の出動による教職員増やIT化などだけではとても解決できないものがある。
どのような方式の移行でも、移行初年度の小学校1年生だけは、本来4月に入学できるはずだった児童の入学時期が9月に遅れ、さらに9月1日までに6歳になった児童が加わるので、生徒の数が前後の学年の1.4倍強(17/12倍)増になる。次年度以降は6歳児入学の時期が9月に変わるだけで生徒数は元に戻る。
一方、在学中の生徒が関係する課題は移行方式によって大きく異なる。方式は2通りあろう。ひとつは、在学生の新学期も中学校以上の入学時期も4月のままにして、移行年度(以降)の小学校1年生だけ9月入学とする方式である。この方式では、小学校は5年の間、 4月新学期の上級生と9月新学期の下級生が混在する。中学校では6年後から2年間、同じ状況になり、高校ではさらに遅れて…、等の状況が続く。これは大混乱である。
もうひとつの方式は、小学校から大学院まで、ある年に一挙に9月新学期に切り替えるものである。この方式は始まってしまえば新学期が9月にずれるだけであるが、初年度の小学1年生の人数が1.4倍強になる問題は変わらず、さらに、開始の前の年は、全ての在学生の学校年度の長さが5カ月長くなる。その5カ月をどう意味づけるのか、また、実際にどう過ごさせるのかを考えなければならない。これは子供を持つ全ての家庭を巻き込む大問題である。そうまでして9月入学・始業にする正当な理由が見つかるだろうか。
ここまで考えると、以前に議論された9月入学・新学期の議論がお蔵入りになったのも、もっともなことだと納得できる。
これを確認した上で、私はやはり、9月入学・新学期を再検討する必要性が現在生じていると感じる。新型コロナウイルス感染症COVID-19の蔓延によって
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