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アビガンの「期限付き早期承認」を強く要望する

新型コロナウイルスとの長期戦に備え、政治判断による攻撃戦略を

川口浩 東京脳神経センター整形外科・脊椎外科部長

 日本政府が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬の第1号として、米国ギリアド・サイエンシズ社がエボラ出血熱の治療用に開発していた未承認の抗ウイルス薬「レムデシビル」を、日本の「特例承認制度」を用いて薬事承認した。特例承認制度とは「日本と同等の審査水準がある外国で承認されていることを条件に国内の審査を簡略化できる」という制度で、これによる承認は極めて異例である。レムデシビルについては、4月末にほとんど同時に、米国から2つのプレスリリース、中国から1つの学術論文が発表された。

拡大米国カリフォルニア州のGilead Sciences本社(shutterstock.com)
 このうち米国の企業主導治験(SIMPLE)では、レムデシビルの5日投与と10日投与の2群間の比較で、治療効果および副作用に有意差はなかった。ただしこれは投与していない対照群「プラセボ群」との比較試験ではない。また、もうひとつのNIH(アメリカ国立衛生研究所)によるプラセボ対照の多国間医師主導治験(ATT1)においては、「レムデシビルを投与した重症患者については、回復までの期間が15日から11日に短縮された」としたが、死亡率については有意差が出ていない。一方、中国での二重盲検対照比較試験では「レムデシビルはプラセボに比べて有意な臨床効果はなかった」とされている。

 これらの治験を俯瞰すると、劇的に効くといえる印象ではなく、腎障害や肝障害の副作用も多く報告されていることも気になる。むしろサイエンスを超えた米中間の政治的背景の関与を勘繰ってしまうが、日本政府はレムデシビルを特例承認した。ただし現在は治験に使う以外にレムデシビルの在庫はほとんどないとされている。政府は「日本も治験に貢献しているので一定の割り当て分があり、米国から調達できる」との見通しを示しているが、そうした貢献はごく少数例という話だし、臨床の現場に届くのは早くても夏になるという予測である。

日本発の「アビガン」にも動きが

 こうした中で、日本発の治療薬にも新しい動きが出てきた。安倍総理は5月4日の記者会見で、抗インフルエンザ薬「アビガン(ファビピラビル)」について、月内に薬事承認が得られるよう厚労省に指示したことを公表した。タミフルなどの既存の抗インフルエンザ薬は、ウイルスを細胞内に閉じ込めることで感染細胞を増やさない働きをするのに対し、アビガンはウイルスの遺伝子複製そのものを阻害するため、既存薬に耐性を有するウイルスへの治療薬とみなされてきた。低分子化合物であるので量産が可能で、少なくとも国内供給が追い付かない心配は無さそうだ。

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筆者

川口浩

川口浩(かわぐち・ひろし) 東京脳神経センター整形外科・脊椎外科部長

1985年、東京大学医学部卒。医学博士。米コネチカット大学内分泌科博士研究員、東京大学医学部整形外科教室助手・講師・准教授、JCHO東京新宿メディカルセンター脊椎脊髄センター長などを経て、2018年より現職。日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医。国際関節病学会理事、日本軟骨代謝学会理事。

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