軟弱地盤の地盤改良は技術的に深刻な問題を抱えている
2020年05月14日
新型コロナウイルスは世界を席巻してパンデミック(世界的流行病)となり、危機に臨んだ際のリーダーたちの資質の差を否応なく人々の前に明らかにした。米国のトランプ大統領は、事態を甘くみて米国を世界最大のコロナ被災国としたが、責任を回避するため中国とWHOの非難に血道をあげている。しかし、手の消毒液にはウイルスを殺す力があるのだからこれを注射すればよいと発言して、無知を全世界の前に曝け出した。一方、ドイツのメルケル首相やニュージーランドのアーダン首相は、国民に寄り添い一緒に戦おうとする揺るぎない姿勢で目を見張るようなリーダーシップを発揮した。
それではわが安倍首相のコロナ危機対応はどうだっただろう。オリンピック東京開催に固執して緊急事態宣言発令の決断が遅れ、費用対効果が疑わしいアベノマスクで顰蹙を買った。ところが日本人の国民性もあり、強制力のない外出自粛要請がそれなりに効果を発揮してオーバーシュートがどうやら回避され、決定的な失態はないかに見える。
あと一つ、沖縄の市民からみて許しがたいのが、コロナ渦中の4月21日に国(沖縄防衛局)が辺野古新基地設計概要変更申請を行ったことである。国中が新型コロナ禍で大騒ぎとなり、4月7日に政府が緊急事態宣言を行い、そして沖縄でも4月20日に玉城デニー知事が県独自の緊急事態宣言を発表する中で、4月21日、沖縄防衛局は、大浦湾における地盤改良工事に伴う埋立変更承認申請書を沖縄県に提出した。翌4月22日の地元紙琉球新報は、「コロナ渦中に申請 対立新たな局面へ」と特大の見出しでこのニュースを伝え、「工事中断しコロナ対策を」という玉城知事の発言を報じた。
ドサクサに紛れて米国との約束である新基地建設を前に進めようとしたのだが、これはまさに血税をドブに捨てる行為以外の何物でもない。後述するように大浦湾の軟弱地盤を改良できる技術的見通しが立っているとは言い難く、しかも国の当初計画では3,500億円であった工事費がこの設計概要変更で2兆5,600億円(沖縄県の推定)にも膨れ上がることとなるからだ。それでなくともコロナ禍への対応に十分な予算措置が講じられているかが問われている現在、巨額の血税を技術的にも疑問がある辺野古埋立に投入する件に国民は無関心であってはなるまい。
国(沖縄防衛局)が設計概要変更申請を行ったのは、辺野古新基地建設を進める大浦湾には当初想定していなかった軟弱地盤があり、設計概要を変更して地盤改良を行う必要があること、また設計概要を変更するにあたっては公有水面埋立法13条の2に基づき知事の許可が必要だからである。しかし国は、今回の申請に際し、軟弱地盤の地質をしっかりと把握したうえで地盤改良工事の設計を行ったとは言い難い。
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