桜井国俊(さくらい・くにとし) 沖縄大学名誉教授、沖縄環境ネットワーク世話人
1943年生まれ。東京大学卒。工学博士。WHO、JICAなどでながらく途上国の環境問題に取り組む。20年以上にわたって、青年海外協力隊の環境隊員の育成にかかわる。2000年から沖縄暮らし。沖縄大学元学長。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
軟弱地盤の地盤改良は技術的に深刻な問題を抱えている
新型コロナウイルスは世界を席巻してパンデミック(世界的流行病)となり、危機に臨んだ際のリーダーたちの資質の差を否応なく人々の前に明らかにした。米国のトランプ大統領は、事態を甘くみて米国を世界最大のコロナ被災国としたが、責任を回避するため中国とWHOの非難に血道をあげている。しかし、手の消毒液にはウイルスを殺す力があるのだからこれを注射すればよいと発言して、無知を全世界の前に曝け出した。一方、ドイツのメルケル首相やニュージーランドのアーダン首相は、国民に寄り添い一緒に戦おうとする揺るぎない姿勢で目を見張るようなリーダーシップを発揮した。
それではわが安倍首相のコロナ危機対応はどうだっただろう。オリンピック東京開催に固執して緊急事態宣言発令の決断が遅れ、費用対効果が疑わしいアベノマスクで顰蹙を買った。ところが日本人の国民性もあり、強制力のない外出自粛要請がそれなりに効果を発揮してオーバーシュートがどうやら回避され、決定的な失態はないかに見える。
しかし、危機に乗じて火事場泥棒的に無茶を通そうとする政権の体質は今回のコロナ危機でも遺憾なく発揮された。第一には安倍政権の宿願である憲法改正である。今年の憲法記念日は、新型コロナを巡る緊急事態宣言が発令中という異例の状況で迎えることとなり、改憲派も護憲派も大規模集会を開かずインターネットで主張を配信した。安倍首相は、コロナを枕ことばにして「国会の憲法審査会で緊急事態条項の議論を進めるべきだ」との持論を主張したのである。
あと一つ、沖縄の市民からみて許しがたいのが、コロナ渦中の4月21日に国(沖縄防衛局)が辺野古新基地設計概要変更申請を行ったことである。国中が新型コロナ禍で大騒ぎとなり、4月7日に政府が緊急事態宣言を行い、そして沖縄でも4月20日に玉城デニー知事が県独自の緊急事態宣言を発表する中で、4月21日、沖縄防衛局は、大浦湾における地盤改良工事に伴う埋立変更承認申請書を沖縄県に提出した。翌4月22日の地元紙琉球新報は、「コロナ渦中に申請 対立新たな局面へ」と特大の見出しでこのニュースを伝え、「工事中断しコロナ対策を」という玉城知事の発言を報じた。
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