スピード重視、青だけでなく黄、赤もある警戒信号
2020年05月12日
「大阪モデル」は、いつ、どういう状況になれば「解除」されるのか、警戒信号をゆるめる基準として注目されたが、実は赤信号とセットになっている。解除後、急激な感染拡大が起こってしまえば元も子もない。第二波、第三波がくることは予想される。
基準は、出口に向かうときの「消灯」信号と危険に向かう「点灯」信号からなる。緑にあたる消灯の基準は、①感染経路不明な新規感染者が10人未満(7日平均)②PCR検査を受けた人に占める陽性者の割合が7%未満(7日平均)③重症病床の使用率6割未満。すべての基準を7日間、続けて下回ればよい。警戒の点灯基準は①5~10人以上、前週に比べて多い②7%以上だ。
①の感染経路不明の新規感染者の数で市中の感染拡大状況を判断し、②の陽性率で検査体制、③の重症病床の使用率で医療体制の逼迫状況をみるという。
この基準はどのように決めたのか。世界の基準や論文を参考にしたという。たとえば、②は、千葉大のグループが、各国の状況を調べて、陽性率が7%を超すと人口あたりの死亡率が高くなるとした論文を参考にした。そして、大阪府の過去の経験に照らして妥当な数字だと判断した。たとえば、3月27日に感染経路不明の新規感染者平均が5・29人となってから、感染者数の急増が始まった。
過去の状況をグラフに書いて、エイヤーと線を引いた感じがしなくもない。感染者の推移を予測する数理モデルは使っていない。これで感染爆発の兆候と終息状況を精度よく反映した基準になるのか。
大阪府が設置した専門家会議の座長をつとめ、この基準について相談された朝野和典大阪大教授は「サイエンスとしての正確性には自信がない」「エビデンスがあるかというとありません」と述べた。
府の対策本部会議でこの発言を聞いて、「えっ?」と思ったのは私だけではないだろう。朝野さんもこの基準を最初に見た時、これでいいのかと疑問を感じたという。たとえば、PCR陽性率の数字など、検査数を増やし、分母を大きくすれば簡単に変えられるではないか、と。
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