地震、津波、大雨…… 自然災害に偏った備えで、強靱な国づくりと言えるのか
2020年05月21日
南海トラフでマグニチュード(M)9という巨大地震が起きた場合の被害想定は、2012年8月に発表されトップニュースで報じられた。32万人という数字は、大きな見出しになり、関連した報道でも強調され続けた。その後、対策が進んだとして、政府は2019年に想定を最悪23万人に引き下げている。
新型インフルエンザの想定は、2005年に策定された行動計画の前提として、感染者が4人に1人で、死者数は17万~64万人、入院患者は53万~200万人、外来患者は1300万~2500万人と予測された。行動計画には、治療薬「タミフル」を2500万人分備蓄、海外旅行の自粛を勧告、大規模施設や興行施設など多くの人が集まる施設の活動自粛を勧告、学校や通所施設の臨時休業を要請、国民にマスク着用、うがいや手洗いを奨励することなどが盛り込まれた。
このときの報道は、被害の想定よりも、行動計画の内容が中心だった。1面トップで報じた朝日新聞の見出しは「新型インフルエンザ対策 政府が行動計画」「治療薬 国家備蓄を強化」「大流行時 集会・出勤を制限」だった。読売も毎日も日経新聞も1面で報じたが、いずれも見出しには「64万人」という数字はなかった。行動計画は改訂が続けられ、2013年には新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、新しい感染症も含めた行動計画が策定されている。
英内閣府は、国にとって発生したときの影響が大きい災害や事故について、影響の大きさと今後5年間に起きる恐れの大きさを、それぞれ5段階に区分けして表にしてまとめていた。2012年版では、影響度が5でもっとも大きく、5年以内に起きる恐れが2分の1から20分の1だったのが「インフルエンザの大流行」だった。影響度が4で20分の1から200分の1で起きる恐れがあるとされたのが、沿岸部の洪水と深刻な火山噴火だった。アイスランドの火山の大噴火は英国にも有毒ガスや天候不順などの恐れがある。2017年版でもインフルエンザの大流行は同じ位置づけ、影響度4には、寒波、大規模停電、沿岸や河川やの洪水があげられている。他にも、熱波、動物感染症、火山噴火、交通障害、大気汚染、森林火災、地震などの影響度が評価されている。
英国本土にはない火山まで評価する徹底ぶりに、網羅的に洗い出した評価だと感じ、日本で当てはめたらどうなるか考えた。
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