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鳥がさえずる今ごろは、きっと中生代でも恐竜たちの繁殖期だった!?

抱卵したのは鳥に近いグループだけ 他のグループは太陽熱や発酵熱で卵を温めていた

米山正寛 朝日新聞記者(科学医療部)

拡大恐竜の巣や卵の化石について語る田中康平さん=筆者撮影
 鳥たちが繁殖期を迎えている。野外ではさえずりの声が響き、巣に出入りする親鳥の姿も見られる。鳥は恐竜だったわけだから、恐竜がいた中生代の今から約2億3000万~6600万年前の時代でも、きっと今ごろが恐竜たちの繁殖シーズンだったのではないだろうか。世界各地から恐竜の卵や巣の化石が見つかるようになり、恐竜がどのように繁殖していたかの研究も進んでいる。国内では数少ない専門家の一人である筑波大学生命環境系助教の田中康平さん(34)に話を聞いてみた。

恐竜は鳥のように卵を抱いていたのだろうか?

――恐竜は爬虫類で、現在の生き物の中ではワニ類と鳥類が恐竜に近縁と聞く。彼らは卵で繁殖するし、恐竜も卵を産んでいた。ただ、ワニは産んだ卵のそばで巣を守るし、鳥類は親が卵を抱いて温める。恐竜はどうだったのだろうか。

 恐竜と言っても様々な種類がいて、それについては両方のタイプがいたと考えられる。鳥に近いグループの恐竜は親が抱卵していたことがわかってきた。でも、それ以外のグループの恐竜は基本的に卵を地面の中に埋めて、抱卵はしなかったようだ。

拡大恐竜の巣化石の例。(A)ハドロサウルス類=カナダのロイヤル・ティレル古生物博物館所蔵(B)竜脚類=フランスのエクス・アン・プロヴァンス自然史博物館所蔵(C)オビラプトロサウルス類=中国の贛州博物館所蔵(D)トロオドン類=ロイヤル・ティレル古生物博物館所蔵、いずれも田中康平さん提供
――恐竜の親が抱卵したか、あるいは地面の中に埋めて抱卵しなかったかは、どうしてわかるのだろうか。

 卵の殻を調べるとわかるようになった。卵殻には中の赤ちゃんが呼吸をするための穴(気孔)がある。親が卵を温めるなら、卵は乾燥した空気にさらされていることになる。すると中の水分が抜け出てしまって、干からびる可能性がある。そこで抱卵する鳥類の卵殻には、気孔の数を減らしたりサイズを小さくしたりして、乾燥を抑えるような対策が取ってある。一方、ワニのように卵を埋めるグループでは、地面の中が多湿で酸素が乏しい環境であるため、卵殻の気孔が多くサイズも大きいという、言わば穴だらけの卵を産んでいる。

――卵の殻に、そんな違いがあるのか。

 いろいろな恐竜の卵を調べると、抱卵されていたとみられる穴の少ないものと、そうでなかった穴だらけのものとに分かれる。抱卵行動は鳥類に近い獣脚類恐竜の中で進化したと考えられている。実際、獣脚類の中のオビラプトロサウルス類やトロオドン類の卵は、卵殻が緻密で乾燥に強かったとみられ、親が抱卵していた可能性が高い。ただし、もう少し原始的な獣脚類のテリジノサウルス類の卵殻は穴だらけのタイプで、こちらは卵を埋めていた可能性がある。巨大な竜脚類や系統的にもっと離れた鳥盤類のハドロサウルス類なども、抱卵せずに卵を埋めていたようだ。

抱かない種類は太陽熱や発酵熱を利用

――卵を埋めた場合は、どうやって温めていたのかが気になる。

 現在のワニ、また鳥類の中でもツカツクリという仲間は、卵を砂や腐葉土の中に産んで、太陽熱や発酵熱を利用して温めている。川岸や海辺の砂は熱の伝導率が高いので、低緯度~中緯度地域で太陽熱を利用するには有利だ。一方、腐葉土が微生物によって分解されるときに発生する発酵熱を利用するなら、中緯度~高緯度地域でもうまくやれば、かなりの熱が得られる。

――なるほど。では恐竜はどうだったのか。

拡大
 巣や卵の化石が見つかる場所の堆積物を調べていくと、一部の竜脚類は砂からばかり出てくるし、しかも低緯度~中緯度地域からしか見つからない。ところが別の竜脚類やハドロサウルス類では、ほとんどが土で、高緯度地域、中には当時の北極圏からも見つかる。卵を埋める巣材を砂にするか土にするかという好みは、結局は温め方の違いによると考えられ、発酵熱を利用した恐竜は高緯度地域まで分布を広げることができたようだ。言い換えれば、恐竜の地理的な分布を考える上で、どんな繁殖方法をとっていたかが重要であることがわかってきた。

大型の恐竜でも卵をつぶさなかった

――抱卵していたというオビラプトロサウルス類は、獣脚類の比較的小さな羽毛恐竜なので、そのイメージが抱きやすい。ただ最近は体重2トンもの大型種がいたことも分かってきたと聞く。そうした大型種も抱卵していたのだろうか。

 2トンもの親が上に座ったなら、確かに卵はつぶれてしまいそうだ。そこで

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筆者

米山正寛

米山正寛(よねやま・まさひろ) 朝日新聞記者(科学医療部)

朝日新聞科学医療部記者。「科学朝日」や「サイアス」の編集部員、公益財団法人森林文化協会事務局長補佐兼「グリーン・パワー」編集長などを務め、2018年4月から再び朝日新聞の科学記者に。ナチュラリストを夢見ながら、とくに自然史科学と農林水産技術に関心を寄せて取材活動を続けている。

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