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重要性増す情報リテラシー教育

情報教育で一番大事なのは情報社会の危険性を学ぶこと

伊藤智義 千葉大学大学院工学研究院教授

拡大ソーシャルメディアを信頼しすぎて危険に気づかない人も=shutterstock.com

SNSのリテラシー向上の必要性を感じさせた事件

 5月25日夜、非常事態宣言が全国的に解除された。その8時間ほど前、菅官房長官が「SNS (Social Network Service) リテラシー向上のための啓発を行うことが重要」という趣旨の発言を行った 。2日前になくなった女性についてのコメントである。女性はネット上で多くの誹謗中傷を受けていたという。心の痛む報道だった。

 リテラシーとは、本来、「読み書き」を意味する英語であるが、「適切な使い方を身につける方法」のような意味合いで数多く使われるようになってきている。大学で情報の授業というと、かつては「プログラミング」を意味することが多かったが、現在では「情報リテラシー」の割合が急速に増大している。

 情報系のリテラシーはいくつかあり、それぞれの定義(取り扱う範囲)が曖昧に重なっているが、本稿ではネットワークなども含め、デジタル機器に関するリテラシー全般を「情報リテラシー」として論を進めたい。新型コロナの影響で、ほとんどの大学がオンライン授業を取り入れ、中高の一部にもそれが広がっている今、情報リテラシー教育はますます重要になっている。「情報教育」が学校教育の中に取り入れられてから久しいが、その中で一番に学ぶべきは情報社会の危険性であることを痛感している。

デジタルネイティブたちは情報リテラシーを学ぶ機会がなかった

 ところで「プログラミング」と「情報リテラシー」は何が違うのか?

 プログラミングは、文字通り、コンピューター言語を利用して何らかのシステムを開発(プログラミング)することである。「情報リテラシー」はもっと広義で、デジタル機器の基本的な操作方法に始まり、パスワードの取り扱いやそれに関する情報漏洩などのセキュリティ問題、適正なSNSの利用方法など、情報社会の肯定的な面だけでなく、危険性をも取り扱う。

 21世紀に入り、デジタル環境は大きく変貌した。生まれたときからスマホがあった今の若者は「デジタルネイティブ」ともいわれる。複数台のスマホを持ち、親よりもデジタル機器の取り扱いに優れている小学生も珍しくない。

拡大スマホを手にネットを使う高校生たち=高見澤恵理撮影

 しかし、デジタルネイティブたちが「個人情報をむやみにアップしてはいけない」「ネットに流れた情報(特に画像)は消去することが困難」「フリーWiFiはセキュリティが脆弱」「サポートの切れたシステムをネットワークに接続することは危険」「ネット情報の信憑性」「匿名性の善悪」などの情報リテラシーを教わる機会はほとんどなかった。

 これは、

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筆者

伊藤智義

伊藤智義(いとう・ともよし) 千葉大学大学院工学研究院教授

1962年生。東京大学教養学部基礎科学科第一卒、同大学院博士課程中退。大学院生時代に天文学専用スーパーコンピューター「GRAPE」の開発にかかわり、完成の原動力となる。現在は「究極の3次元テレビ」をめざし研究中。著書に、集英社ヤングジャンプ「栄光なき天才たち」(原作)、秋田書店少年チャンピオン「永遠の一手」(原作)、集英社新書「スーパーコンピューターを20万円で創る」など

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