高橋ペイラニ留愛(たかはしペイラニ・るな) フリーランス(執筆・翻訳)
1975年東京都生まれ、フランス・ニース在住。グラフィックデザイナーとして働いた後、2008年に渡仏。パリ第3大学フランス研究科卒。2017年にニースに引っ越し、海と山に囲まれた生活を享受中!
※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです
9月入学を議論する前に「初等教育のあり方」について考えてみよう
4月下旬からわずか1カ月程度で突如、9月入学の議論が大きな盛り上がりをみせた。当初は、9月入学がすべての問題を解消してくれるかの如き論調が目立ったものの、その後、特に教育関係者の方々から冷静な意見が相次ぎ、9月入学に前のめりな風潮がやっと落ち着いてきた。
臨時休校のために授業時間が減った現在の生徒には何らの対応を行う必要がある。しかし、そのことを拙速に9月入学への移行と結びつけるべきではない。むしろこれを契機として、日本の教育システムが永年抱えて続けてきた諸々の問題点を解消するため、より長期的な視野に立った教育の姿を議論し、それを実現すべきだ。
そこで今回、高橋ペイラニ留愛さんからフランスの義務教育について伺ったことを紹介したい。彼女は、私の共同研究者(セバスチアン・ペイラニ氏)と結婚して現在はニース在住。息子さんのテオ君は、日本で言えば幼稚園の年長さんである。3歳から義務教育が始まるフランスのシステムは、日本の義務教育のありかたに興味深い視点を提供してくれよう。これに基づいた私見は、別途述べさせて頂きたい。(聞き手 須藤靖・東京大学教授)
1 まず、フランスの教育制度を簡単に紹介してもらえますか?
フランスでは、3〜16歳が義務教育です。フランスでは日本と異なり、保育園と幼稚園の役割が明確に分かれており、保育園は0〜3歳を、幼稚園(École maternelle)は3〜6歳を担当します。幼稚園は義務教育で、学習が始まります。その後、小学校(École élémentaire)、中学校(Collège)、普通高校(Lycée)と進みます。フランスにはグランゼコールと呼ばれる独自のエリート養成大学・大学院がありますが、それら以外の大学(Université)の場合、全国共通入学資格試験であるバカロレアを受験し合格すれば進学できます。
2 年齢とともに学年次の数字が下がるのが面白いですね。16歳までが義務教育ということは、その後に高校を退学する人がいるのでしょうか? それとも普通高校の場合は最終学年まで修了するが、職業高校では第1学年までということなのでしょうか?
高校には普通・工業・職業の3種類があり、普通・工業高校は3年制、職業高校は2〜4年制です。職業高校に進んだ場合は早くて16歳で卒業となります。そのため義務教育も16歳まで、となっているのです。
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