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日本型COVID-19対策「成功の謎」をどう捉えるか

新型コロナの感染者数・死者数が、欧米と比べて大幅に少ない要因を検討する

下條信輔 認知神経科学者、カリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授

生物学的な要因はあるのか

 言うまでもなく、ウィルスは常に変異を繰り返す(SARSなどに比べれば、COVID-19の変異速度は遅い、という説もあるが)。稀にその変異が毒性を変えることもある。以下の各説はいずれも、この点と関係している。

拡大BCG接種をしている国は感染者が少ないように見える。欧州疾病予防管理センターのデータ(6月1日)を編集部で整理

  1. 【ウィルスの変異】まだ研究が進行中だが、COVID-19には大きく3、4種類の変異系列があり、地域・国毎に占める割合も違う。日本に初期に上陸したのは武漢を起源とするアジア型だが、これが比較的弱毒性で、他方欧米型は強毒性である可能性を否定できない(山内正敏氏『欧米で流行中のコロナは今までより10倍以上危険』など)。
  2. 【獲得免疫・交差免疫】COVID-19の感染者には、無症状や軽症が多い。また日本では入国制限が遅れた。だから3月の時点で日本人の多くがすでに無症状感染し、抗体を持っていたのでは。つまり獲得免疫だ。そのように疑ったのは筆者だけではなかった(拙稿『緊急提言:抗体検査を活用し、正しい感染症対策をさぐれ』)。ただ感染のサイクルと、年明けからせいぜい2カ月程度という期間を考えると、これを単独で主要因とするには無理がある。ところが最近、この弱点を乗り越える新説が、京都大学の上久保靖彦教授らによって提出された。武漢型にさえ(当然ながら)その遺伝的先駆である弱毒ウイルスがあった。そちらの方にずっと前に感染し、抗体ができているのでは、という仮説だ(President Online)。さらに広げて、たとえば季節性インフルエンザのような異なるウィルスへの抗体が有効である場合を、交差免疫という。そのような「感染履歴」が、欧米とは異なっていたというわけだ。
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筆者

下條信輔

下條信輔(しもじょう・しんすけ) 認知神経科学者、カリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授

カリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授。認知神経科学者として日米をまたにかけて活躍する。1978年東大文学部心理学科卒、マサチューセッツ工科大学でPh.D.取得。東大教養学部助教授などを経て98年から現職。著書に『サブリミナル・インパクト』(ちくま新書)『〈意識〉とは何だろうか』(講談社現代新書)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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