尊重すべきは地元の判断、象牙問題で安易に欧米に追従するな
2020年06月22日
人間社会を脅かす新興感染症は、いずれも人獣共通感染症である。SARS(重症急性呼吸器症候群)、新型インフルエンザ、そして新型コロナ(COVID-19)と、相次ぐ新興感染症の脅威に、「野生動物を利用すべきでない」という意見が出てきている。もともと「野生動物を殺すな」という声は大きい。実は日本人はほかのアジア人と比べて、魚以外の野生脊椎動物の肉を食べる経験が極端に少ないという(WWFの調査)。一方で、象牙の合法市場を維持している国として批判されることがある。果たして、野生動物の利用は避けるべきことなのか。象牙問題を軸に、日本が取るべき道を考えてみたい。
象牙の密猟密輸は、たしかに2010年ごろまで増え、アフリカ中部東部のゾウはさらに個体数を減らした。2018年に中国が国内市場を閉鎖して以後、タイから日本以外の地域への密輸が問題視されている。だが、密猟対策に有効なのは原産国の貧困対策や汚職対策であり、合法市場を閉鎖することは密売価格の高騰を招く逆効果の可能性が指摘されている。時折日本からの象牙密輸品が押収されるが、これらは昔または1999年と2009年に合法的に南部から輸入された象牙であり、日本の市場が密猟密輸を増やしているという根拠はない。
そして密猟と密輸はそれぞれ2013年と2011年ころから減っていて、現在の政策は奏功している。ワシントン条約の元事務局長らは、日本の象牙市場閉鎖は象の保護に逆効果であり、むしろ象牙の世界取引を注意深く再開することがゾウの保護の利益になるといっている。
アフリカゾウがアフリカの農作物を食べ、農民を踏み殺す害獣であることはあまり知られていない。日本では
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください