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知的・発達障害者の新型コロナ致死率は一般人口の2倍

「ブラック・ライブズ・マター」の影で

粥川準二 県立広島大学准教授(社会学)

 リスク(危害が起こる可能性)は、誰にでも平等に降りかかるわけではない。社会的・経済的に脆弱な状態にある人々(いわゆる弱者)は、そうではない人々よりも、あらゆるリスクを強く被る、ということは容易に想像がつくだろう。

拡大ホワイトハウス周辺での抗議デモ=6月6日、ワシントン、ランハム裕子撮影
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)も例外ではない。アメリカでは黒人は白人よりも同病で死亡する率がずっと高いことが明らかになっている。このこともまた、ブラック・ライブズ・マター運動に世界中から共感が集まっている理由の一つであろう。

 ここではあまり知られていない事例を紹介しよう。知的障害や発達障害のある人たちは、そうではない人たちよりも、新型コロナウイルス感染症アウトブレイクの影響を強く受けているらしいことだ。

ニューヨーク州で致死率2.7倍

 アメリカで障害者施設を広く調査した研究によれば、知的障害や発達障害のある人たちは、そうではない人口集団よりも、新型コロナウイルス感染症で死亡する率が高い。また、NPR(国立公共ラジオ)の独自分析によると、彼らは一般人口よりも高い率で死亡している。6月9日、NPRが報じた。

拡大NPRの独自調査によれば、知的障害者の致死率は高い

 NPRは2州の各公的機関から入手したデータを分析した。ペンシルバニア州の数字は、同州社会福祉局の発達プログラム室がまとめたもので、知的障害者や発達障害者の感染確定者数は801人、死亡者は113人。ニューヨーク州の数字は、同州の発達障害者室から得られたデータをNPRが計算したもので、感染確定数は2289人、死亡者は368人。

 ニューヨーク州では、州全体の致死率が6%であるのに対して、知的障害や発達障害がある人たちの致死率は16%にも達することがわかった。ペンシルバニア州でも、州全体では8%であるのに対して、知的障害や発達障害がある人たちでは14%であるという。(「致死率」とは、ある人口集団内で、感染していることが確定された者の中で死に至った者のパーセンテージのこと。この場合の「確定」とは、PCR検査で陽性反応が確認されたことだと思われる。)

 データは6月3日の時点のもので、ペンシルバニア州では約1.8倍、ニューヨーク州では約2.7倍の違いがあることがわかる。以上は報道機関による独自調査の結果だが、以下のように査読を経た学術研究でも、同様のリスク傾向が見えてくる。

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筆者

粥川準二

粥川準二(かゆかわ・じゅんじ) 県立広島大学准教授(社会学)

1969年生まれ、愛知県出身。フリーランスのサイエンスライターや大学非常勤講師を経て、2019年4月より現職。著書『バイオ化する社会』『ゲノム編集と細胞政治の誕生』(ともに青土社)など。共訳書『逆襲するテクノロジー』(エドワード・テナー著、山口剛ほか訳、早川書房)など。監修書『曝された生 チェルノブイリ後の生物学的市民』(アドリアナ・ペトリーナ著、森本麻衣子ほか訳、人文書院)。

 

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