明らかになった政府のダブルスタンダードと沖縄差別
2020年06月27日
6月15日、河野太郎防衛相は秋田県と山口県で進めてきた地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画を中止すると表明した。迎撃ミサイルを発射した後に落下するブースターから周辺住民の安全を確保するための技術開発にコストと時間がかかるからだという。
一方で「イージス・アショア」配備計画を中止し、他方で辺野古新基地建設を強行するという国の姿勢は、明らかに二重基準であり、またもや沖縄が差別されるのかとの反発が沖縄県民の間に広がっている。主要メディアもまた多くの国民も沖縄の声にあまり聞く耳を持たないように見えるが、それは日本の民主主義の劣化を加速させるものとなるのではと危惧される。
国中が新型コロナ禍で大騒ぎとなり、4月7日に政府が緊急事態宣言を行い、そして沖縄でも4月20日に玉城デニー知事が県独自の緊急事態宣言を発表する中で、沖縄防衛局は4月21日、大浦湾における地盤改良工事に伴う埋立変更承認申請書を沖縄県に提出した。翌22日の地元紙琉球新報は、「コロナ渦中に申請 対立新たな局面へ」と特大の見出しでこのニュースを伝え、「工事中断しコロナ対策を」という玉城知事の発言を報じた。
申請の概要説明資料で、沖縄防衛局は「計画変更に伴う環境影響の予測を改めて実施し、予測結果が現行の環境保全図書と同程度又はそれ以下であったことから、現行の環境保全措置等と同等の内容を実施する」とし、この結論に「環境監視等委員会」の承認が得られたとしている。しかしこの主張は、とうてい承服しがたい。
水深30メートルの大浦湾に張られている汚濁防止膜のカーテンは海面下7メートルしかなく、汚濁の拡散は当初計画でも必至であった。工期短縮のために無理な工法変更を行い、外周護岸を閉じる前に先行盛土を行うというのだから、大浦湾の汚濁は測り知れないものとなろう。防衛省が実施したアセスで5600種もの生き物が生息しているとされる大浦湾の環境に甚大な悪影響を及ぼすこと必至である。
また、防衛省がお墨付きを得たとする「環境監視等委員会」は独立性・第三者性に欠ける御用委員会であることも忘れてはならない。委員の中に埋立事業を受託する民間企業から研究費を受給している者が複数名含まれているからである。
そして政府は、工事関係者に新型コロナ感染者が出たことと、6月7日の沖縄県議選で争点となることを避けるために、約2カ月間にわたり工事を中止していたが、6月12日に57日ぶりに工事を再開した。玉城デニー知事は県議選の結果を踏まえ「辺野古反対の民意は明確になった」「工事再開は大変遺憾だ」と述べたが、安倍首相は「自民党の議席をだいぶ増やすことができた」と工事を進める正当性を強調した。
国が辺野古新基地建設を進める大浦湾には軟弱地盤があるが、国はこの軟弱地盤の存在を2年以上隠してきた。それが明らかになったのは、土木技術者である沖縄平和市民連絡会の北上田毅氏が公文書の公開を請求したからである。本年4月に国が行った設計概要変更申請は、軟弱地盤を改良するためのものである。
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