桜井国俊(さくらい・くにとし) 沖縄大学名誉教授、沖縄環境ネットワーク世話人
1943年生まれ。東京大学卒。工学博士。WHO、JICAなどでながらく途上国の環境問題に取り組む。20年以上にわたって、青年海外協力隊の環境隊員の育成にかかわる。2000年から沖縄暮らし。沖縄大学元学長。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
明らかになった政府のダブルスタンダードと沖縄差別
水深30メートルの大浦湾に張られている汚濁防止膜のカーテンは海面下7メートルしかなく、汚濁の拡散は当初計画でも必至であった。工期短縮のために無理な工法変更を行い、外周護岸を閉じる前に先行盛土を行うというのだから、大浦湾の汚濁は測り知れないものとなろう。防衛省が実施したアセスで5600種もの生き物が生息しているとされる大浦湾の環境に甚大な悪影響を及ぼすこと必至である。
また、防衛省がお墨付きを得たとする「環境監視等委員会」は独立性・第三者性に欠ける御用委員会であることも忘れてはならない。委員の中に埋立事業を受託する民間企業から研究費を受給している者が複数名含まれているからである。
そして政府は、工事関係者に新型コロナ感染者が出たことと、6月7日の沖縄県議選で争点となることを避けるために、約2カ月間にわたり工事を中止していたが、6月12日に57日ぶりに工事を再開した。玉城デニー知事は県議選の結果を踏まえ「辺野古反対の民意は明確になった」「工事再開は大変遺憾だ」と述べたが、安倍首相は「自民党の議席をだいぶ増やすことができた」と工事を進める正当性を強調した。
国が辺野古新基地建設を進める大浦湾には軟弱地盤があるが、国はこの軟弱地盤の存在を2年以上隠してきた。それが明らかになったのは、土木技術者である沖縄平和市民連絡会の北上田毅氏が公文書の公開を請求したからである。本年4月に国が行った設計概要変更申請は、軟弱地盤を改良するためのものである。
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