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日本のスパコンが1位を独占した2020年6月期ランキング

華々しくデビューした「富岳」と新星のスパコン「MN-3」

伊藤智義 千葉大学大学院工学研究院教授

拡大スパコン「富岳」=2020年6月16日、神戸市中央区、西岡臣撮影

4部門で1位という史上初の快挙

 日本のスーパーコンピューター(スパコン)「富岳」(理化学研究所/富士通)が6月22日に発表されたTop500ランキングで1位を獲得した。さらにAI向けの計算を競うHPL-AIをはじめ、合わせて4部門で1位を獲得するという史上初の快挙を成し遂げた。日本のフラグシップ(旗艦)スーパーコンピューターと名乗るだけある華々しいデビューとなった。

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 「富岳」の性能は2位の米国「Summit」の2.8倍となっており、圧倒的な性能を世界に示した。製造元となった富士通製のスパコンはTop500に13台(2.6%)しかランキングされていないが、「富岳」の圧倒的な性能で、Top500全体(500台)の演算性能のうち、富士通が占める割合は21.5%に跳ね上がり、ここでもトップに躍り出ている。

 ただし、見過ごしてはいけないのはコストである。「富岳」には1000億円を超える予算が投じられている。他のスパコンとは1桁違う規模である。その是非をここで論じるつもりはないが、これからの実用化には相応の成果が期待される。その一つに新型コロナウィルス対策があり、実際に「富岳」の前倒し運用が進められているとのことである。

 また、人材育成の期待も大きい。私の研究室からも富士通に入社した卒業生がいて、毎年年賀状で近況を知らせてくれる。今は40代半ばであり、数年前からスパコン部門に所属している。最近では、「富岳」に関する仕事を頑張っていると、短文ではあるが、誇らしげに書かれてくる。世界一のプロジェクトに関われる人はそれほど多くはない。自分の仕事が世界一と報道されれば大きな成功体験になる。来年の年賀状が今から楽しみである。

省エネ世界一も日本の会社のスパコン

拡大深層学習用スーパーコンピュータMN-3=Preferred Networksのホームページから
 Top500と並んで重要な指標がGreen500である。Top500が純粋に演算性能だけで評価するのに対して、Green500は電力消費量あたりの演算性能で評価する。わかりやすくいえば、Green500の1位は「省エネ世界一」を意味する。2020年6月の1位はPreferred Networks(プリファード・ネットワークス:PFN)の「MN-3」が獲得した。聞き慣れない名前かもしれないが、日本の会社である。2014年に東大や京大などの卒業生を中心に設立された。30代の西川徹さんが代表を務める若い企業である。

 2016年、PFNは理化学研究所の牧野淳一郎さんの研究グループと共同で、経済産業省が管轄するNEDOプロジェクトの先導研究「次世代人工知能・ロボット中核技術開発 (次世代人工知能技術分野)大規模目的基礎研究・先端技術研究開発 超低消費電力深層学習プロセッサおよびソフトウェア層の研究開発」に応募し、課題の一つとして採択された。そのときにテストチップの開発に成功し、大きな自信を得た。

拡大牧野淳一郎氏(左)と平木敬氏(右)=Preferred Networks(PFN)のホームページから。写真は稲葉真理東京大学准教授提供
https://projects.preferred.jp/mn-core/#overview

 そして、「MN-3」のプロセッサであるMN-Coreを自社開発することを決定する。仕様策定は

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筆者

伊藤智義

伊藤智義(いとう・ともよし) 千葉大学大学院工学研究院教授

1962年生。東京大学教養学部基礎科学科第一卒、同大学院博士課程中退。大学院生時代に天文学専用スーパーコンピューター「GRAPE」の開発にかかわり、完成の原動力となる。現在は「究極の3次元テレビ」をめざし研究中。著書に、集英社ヤングジャンプ「栄光なき天才たち」(原作)、秋田書店少年チャンピオン「永遠の一手」(原作)、集英社新書「スーパーコンピューターを20万円で創る」など

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