「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切だ)」は生存を脅かされた者たちの叫び
2020年07月13日
ハーバード公衆衛生大学院の学部長ミシェル・ウィリアムズは、ワシントンポスト紙への寄稿で、白人警察官によるジョージ・フロイド氏の殺害と新型コロナで黒人の健康被害が甚大であることは、アメリカ社会に取り返しのつかないほど壊滅的な結果をもたらす可能性があると指摘した。アメリカでは、180万人以上が新型コロナに感染、10万人以上が死亡して世界最多となっているが、黒人の被害は特に深刻で、白人の3倍にも上っている。
その理由としては、まず日本のような国民皆保険とは違う健康保険制度が挙げられる。黒人は健康保険に加入している割合が低く、たとえ入っていたとしても低い掛け金のプランなので受診したときの自己負担金が高く、体調不良でも受診しない人が多い。また、サービス業や肉体労働に従事していて人と接する機会が多く、テレワークが難しい。公共の交通機関を使うことが多く、多世代で暮らすのが一般的なので一人が感染すると家族内で広がってしまう。こうした多数の要因が挙げられている。
しかし、このほかにも黒人の健康被害が深刻になっている重要な要素がある。それは、黒人に対する医療者の偏見に基づく不平等である。これは、いくら健康保険の制度が作られたり、差別を禁止する法律が制定されたりしたとしても解決しない問題である。
黒人女性医師で、鎌状赤血球症患者であるシモーネ・ウーアン(Simone Uwan)は、自伝『患者の体の中の医師-鎌状赤血球症と慢性疼痛を持ちながら大きな夢を持つ(A Doctor In A Patient's Body: Dreaming Big With Sickle Cell Disease And Chronic Pain)』で、
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