新基地を巡る環境に変化の兆し
2020年07月15日
沖縄では6月7日に県議選があり、玉城デニー知事の与党各派議員が25人、野党が23人と、きわどいところで与党多数が維持された。しかし、その後の議長人事で与党の目算が狂うなど、今後の玉城県政は多難なものとなると予測されている。
工事関係者に新型コロナ感染者が発生したことと、県議選への影響を避けるため、政府は辺野古新基地建設工事を中断していたが、6月12日に57日ぶりに再開した。その際、安倍首相は、県議選で「自民党の議席をだいぶ増やすことができた」とし、工事を進める正当性を強調した。
しかしこの間、辺野古新基地建設に関して、政府は確実に追い込まれてきている。「潮目が変わった」「建設断念に向けたカウントダウンが始まった」というのが、多くの沖縄県民の実感である。
すでにこの『論座』で報じたように、去る6月15日、河野太郎防衛相は秋田県と山口県で進めてきた地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画を中止すると表明した。迎撃ミサイルを発射した後に落下するブースターから周辺住民の安全を確保するための技術開発にコストと時間がかかるからだという。
これに沖縄県の玉城知事が直ちに反応した。「コストと時間を考えたら辺野古の方がより無駄だ」というのだ。辺野古新基地建設は、軟弱地盤の改良のため、今後、運用まで少なくとも12年かかり、工費も当初計画の2.7倍の約9300億円(県の試算では2兆5500億円)と膨らんでいるからだ。
新型コロナ対策で財政の破綻(はたん)が危惧されるときに、辺野古につぎ込まれる血税は「イージス・アショア」の比ではない巨額である。そして沖縄県民は、国政選挙、地方選挙、さらには昨年2月の県民投票を通じて、反対の民意を繰り返し表明してきた。一方で「イージス・アショア」配備計画を中止し、他方で辺野古新基地建設を強行するという国の姿勢は、明らかに二重基準であり、またもや沖縄が差別されるのかとの反発が沖縄県民の間に広がっている。
そうした中、中谷元・元防衛相のように、「完成が遅れる辺野古新基地は軍事技術的にも時代遅れのものとなるのでは」と危惧する声が自民党の中からも聞こえてくるようになった。明らかに風向きが変わりつつある。
米連邦議会下院軍事委員会の即応力小委員会は、6月23日、2021年度国防権限法案を可決したが、「辺野古新基地建設予定地の大浦湾で地震の可能性や地盤の不安定性、ジュゴンやサンゴなどへの影響が懸念されている」と指摘し、これらの懸念を含む5項目についての評価報告書を2020年12月1日までに議会に提出するよう国防長官に指示する文言を盛り込んだ。
ついに米議会が動こうとしている
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