中国がくしゃみをすれば、世界が風邪をひく
2020年07月17日
7月3日付の前稿で、中国関連情報、特に直近の中国南部における大洪水について、西側メディアで報道がないのは異常だ、と述べた(本欄拙稿『中国関連情報: 西側メディアの沈黙とネット市民の「襲撃」- COVID-19、大洪水、そして香港』)。まさにその翌日、熊本、鹿児島両県の一部に「大雨特別警報」が発令され、球磨川流域を中心に洪水・浸水が発生、被害は拡大した。連日報道される被害の拡大を見て、筆者は正直、後悔の念にかられた。
「後悔の念」と書いたが、もちろん記事を出したことを後悔した訳ではなく、むしろその逆だ。まず第一に、もっと早く出せなかったかという点(編集部は迅速に対応してくれたのだが)。そして何よりも、「数日以内に、同じ天災が日本を襲う」とはっきり書けなかったことだ。もちろん筆者だけの責任ではないが、大々的に警告・周知して準備を急げば、高齢者を中心とする人身被害だけは、かなり抑えられたのではないか。
実は執筆中も、そういうことはちらりと脳裏をよぎった。が、いかんせん筆者は気象学にうとかった。そこで「後の祭り」ながら、少し調べてみた。
まず「梅雨は東アジア独特の雨季である。」この認識は気象学では常識らしい (児玉、山田、2007)。5月中旬ごろから梅雨前線は天気図上に現れ、華南や南西諸島付近に停滞する(以下、ウィキペディア)。5月下旬から6月上旬ごろになると、九州や四国が梅雨前線の影響下に入り始める。このころから、梅雨前線の東部ではオホーツク海気団と小笠原気団のせめぎあい、他方、華北や朝鮮半島、東日本では、高気圧と低気圧が交互にやってくる。
北上を続ける梅雨前線は、6月中旬に入ると、中国では南嶺山脈付近に停滞、日本では本州付近にまで勢力を広げてくる。次に梅雨前線は中国の江准(長江・准河流域)に北上する。6月下旬には華南や南西諸島が梅雨前線の勢力圏から抜ける。これが例年のパターン、ということだ。つまり梅雨の時季の気象は、東アジア全体で見る必要がある。
次に今年の問題の時期、5月〜7月の東アジア天気図の推移を、半月刻みで例示する(気象庁サイトによる)。見ずらいかも知れないが、以下の3点だけ実感してもらえればいい。①発生した梅雨前線が(今年は特に)長く日本列島を横断したまま停滞している様子、②気圧配置が東アジア全体で安定し、高気圧が北から南に張り出す夏型になかなかならない様子、そして何よりも、③中国大陸の気象が日本列島のそれと直接つながっている様子、の3点だ。
日本で大雨洪水警報が出たのは7月4日だが、前稿で述べた通り、華南で未曾有の規模の被害が出つつあることは、6月中旬の時点ですでに明らかだった。日本でも、気象庁や主要メディアはじめ官民で、もっと早く警戒の声を上げることはできなかったのか。
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