動物のなかでのヒト、自然とのつながりでの脳機能…見つめつづけた偉大な精神
2020年07月31日
動物行動学と比較神経生態学の先駆者だった小西正一先生が7月23日、逝去された。
小西先生は北海道大学理学部を卒業後に渡米、1963年にカリフォルニア大学バークレー校で博士号を取得。その後、ドイツのマックスプランク研究所、米国のプリンストン大学などで実績を積まれ、引退されるまで長らくカリフォルニア工科大学(カルテック)で研究を推進された。特に小鳥のさえずりやフクロウの聴覚による定位で先駆的な発見をし、動物行動学と大脳生理学を結合させた。日本と欧米の双方で数々の受賞をされ、また多くの後進が活躍されている。
たとえば、空中から飛来して逃げるウサギなどの獲物をキャッチするフクロウは、優れた音源定位能力を持っている。その聴覚手がかりがなんであるかを、行動レベルでまず調べた。それがやがて聴覚受容野、空間マップの発見、10マイクロ秒という精細な時間差を検出している神経回路や、GABA(抑制系の神経伝達物質)によるそのチューニングの解明につながった。同じようにして鳥のさえずりの発達・学習の行動実験から、その神経機構を解明、特に「鋳型」概念を提唱した。
ポスドクとして小西研究室で研鑽を積まれた大阪大学の藤田一郎教授も、次のように指摘する。「1960〜70年代、神経科学の主流は生理学だった。細胞の生理学を末梢から積み上げていけば、脳の機能の理解に至るという考えが、支配的だった。つまり行動学と生理学の間には大きな隔たりがあった。その隔たりを埋めるのに大きな貢献をしたのが、マークだった」。マークとは小西先生の愛称だ。
神経科学には、いわゆるモデル動物と呼ばれるものがある(マウス、ショウジョウバエなど)。それらと違い、遺伝子操作もできないどころか、飼育繁殖ですら困難なフクロウやさえずる鳥などを研究対象に選んだ。そこには生態学的関心があり、その奥には動物に対する強い愛着があったという。
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