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研究者と家族が参加する仮想現実(VR)を用いた学術系集会が大成功

VRならではの臨場感、これからの学会はアバターでの参加が主流になる?!

北原秀治 東京女子医科大学特任准教授(先端工学外科学)

集会終了後に運営メンバーが壇上に集まって記念撮影。真ん中で中腰になって手をクロスさせているのが筆者のアバター。
 研究者と家族が主体的に参加する学術系集会として世界で初めて仮想空間(VR)を用いた「Japan XR Science Forum 2020 in US Midwest」が、日本時間の2020年7月12日日曜日に行われた。海外で活躍する日本人研究者とその家族の交流と支援とともに様々な研究分野の融合を目的とし、世界における日本の科学技術の存在感の向上も目指して開催された国際フォーラムだ。仮想空間に設置された会場では、在米、在日の日本人研究者による研究発表、異分野間の共同研究に向けた交流、各種アワードのアバターによる贈呈式、留学にまつわる情報提供や、親子科学教室などが繰り広げられ、日米だけでなくヨーロッパ、アジアなど世界13か国から、400の家族参加を含む1117人の来場があった。このフォーラムはコロナ禍における新しい学術集会のあり方を提案できただけでなく、日本のVR技術の高さも世界に向けてアピールすることができた。

米国で現地の日本人研究者が立ち上げたフォーラムが発展

 今回のフォーラムの起源をさかのぼると、2016年11月に米国ハーバード大学で始まった、当時ボストン在住の日本人研究者によって作り上げられたThe Japan-US Science Forumに行き着く。在米日本人研究者が年々減少し、日本の科学技術の存在感も世界で年々低下する中、逆風に負けずに世界に日本の科学技術のすばらしさを伝えようと、様々な垣根を超えて日本人研究者が集まり、在外公館及び、日本学術振興会、科学技術振興機構といった日本の行政機関を巻き込みながら今日まで発展してきた。

 ここが開くイベントは「Japan X Science Forum」と総称しているが、X(エックス)というアルファベットの中には、開催する国名をいれて、たとえば米国シカゴであれば「The Japan-US(国・地域名) Science Forum in Chicago(都市名)」という風に名付ける。どこの国でも現地の日本人研究者と在外公館、そして日本の行政機関の3者が一体となって運営できるような仕組みを整えてきた。

 現在、コロナ禍で運営方法を見直しているところだが、今後は「The Japan-China Friendship Science Forum in Shanghai」、「The Japan-Europe Science Forum in Paris」などが企画されている。どのフォーラムもその目的は、日本人と外国人研究者の交流であり、日本の科学技術の存在感の向上、そして開催国との共同研究の拡大である。

世界初の挑戦ならではの苦悩の数々

 X(国・地域名)をVRと掛け合わせてXR(クロスリアリティ)とした今回、我々運営チームが目指したのは、コロナ禍以前に行われていた学術集会を、そのまま仮想現実の世界で再構築することであった。会場を幾つにも分け、ポスター発表や企業展示、書籍販売があり、ランチョンセミナーもあるという通常の学術集会を運営するのも非常に大変なのだが、これをVRの世界で実現するという途方もないアイデアである。これは研究者だけでは解決できない。そこで、

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