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日本でこそ加熱式たばこによる死亡リスクの調査をするべきだ

そのために「日本版National Death Index」の整備を

大島明 大阪大学大学院医学系研究科社会医学講座環境医学教室招聘教員

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米国で加熱式たばこアイコスの「曝露低減たばこ製品」としての販売承認

 日本では2014年から販売されているフィリップモーリスインターナショナル(以下PMI) 社製の加熱式たばこアイコス(IQOS)について、米国食品医薬品局(FDA)は、2020年7月7日に「曝露低減たばこ製品」として販売することを承認した。2019年4月30日に販売を認可したのに続き、「曝露低減」のメッセージをつけることを認めたわけである。しかし、「リスク低減」というメッセージは承認しなかった。

 PMI社が承認を求めた時点(2016年12月)では、アイコスは米国で販売が認可されていなかったため、使用者のデータは存在せず、曝露に関するデータしかなかった。FDAは、メッセージをつけるには使用者の追跡調査が必須と判断したのだろう。

 果たしてアイコスは「健康リスクを減らすたばこ製品」であるのだろうか。これは、加熱式たばこ使用者だけでなく、加熱式たばこへのスイッチを検討している紙巻きたばこ喫煙者にとっても、そして『人々はニコチンを求めて喫煙し、タールのために死ぬ』(マイケル・ラッセル博士、1976年)の考えにもとづく「たばこ・ハームリダクション(害の軽減)」に期待する筆者にとっても重大関心事である。

早く使い始めた日本でこそ使用者の追跡調査を

 その答えを得るには、実際に使用している人たちの追跡調査が不可欠である。それは、いち早く加熱式たばこの販売を認めた日本でこそ行われるべきだと思う。米国にはNational Death Index(国民死亡表)というデータベース(姓名、性、生年月日、社会保障番号、死亡年月日、死因を含む)が整備されていて、所定の手続きを踏めば、これとのリンケージ(いわゆる「ひもづけ」)による追跡調査が可能である。これがあるから、いち早く正確な調査ができるのである。日本でも日本版National Death Indexを整備し、データを匿名化して研究者に提供するという仕組みを早く作るべきだと訴えたい。

 PMI社の2016年12月の申請では(1)紙巻きたばこからアイコスに完全にスイッチすると喫煙関連疾患のリスクが減少する、(2)アイコスに完全にスイッチすると紙巻きたばこの喫煙を継続するよりも害のリスクが軽減する、(3)紙巻きたばこからアイコスに完全にスイッチすると有害物質への曝露が有意に減少する、との3つのメッセージの承認を求めた。これに対し、2018年1月24、25日に開催されたFDAの諮問委員会では、(3)には賛成としたものの、(2)は賛成4:反対5で否決、(1)は賛成0:反対8(1人は棄権)で否決という結果だった。これを踏まえ、「曝露低減」のメッセージだけ認めるという結論が出されたのである。

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筆者

大島明

大島明(おおしま・あきら) 大阪大学大学院医学系研究科社会医学講座環境医学教室招聘教員

1966年大阪大学医学部卒業、1967年大阪府立成人病センター調査部就職、1996年同調査部長、2007年3月定年退職。専門は、がんの予防、がんの疫学。地域がん登録全国協議会理事長(1998-2006年)、日本禁煙推進医師歯科医師連盟会長(2003-2015年)を務めた。

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