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大阪府知事「ポビドンヨードうがい液」会見が提起した問題

科学と政治とポピュリズム……コロナ禍で危うさを増す3者の相互関係

下條信輔 認知神経科学者、カリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授

 さて、このデータのどこが問題か。以下にまとめる。

  1. まずサンプル数が極端に少なく、確定的なデータとはいえない。政治的な理由から、功を焦って都合の良い途中経過を公表した疑いがある。グラフを見る限り、特に4日目にはうがいをする群の陽性率は大きく減っている。元が陽性・陰性の頻度データだとすると、おそらく4日目の差は統計的に有意となるが、1、2例の恣意的な追加・削除で結果が大きく変わってしまう。(その上、PCRの陽性・陰性という判定自体が、ある境界線を引いただけで実は連続的な数値だ。そちらで検定する方が的確という指摘もあり得る。)
  2. (指摘されている通り)うがい無しを統制群として比較するだけで「ポビドンヨードうがい液が(特に)効果がある」と結論するのは、大きな論理飛躍がある。他のうがい液や水だけのうがいを統制群として比較しない限り、この結論は出せない。
  3. そもそも、うがいをした群とうがいをしない群への振り分けが公平であり、この2群が均質だったかどうか。サンプル数が少ないぶん、この問題はより大きい。新型コロナの場合、症状の個人差が大きい。また個人の感染サイクルの中でも、感染力が大きいのは発症日前後の数日だけと言われている。すると当然、この41名の中でも、唾液内のウィルス数(濃度)にも大きな差があったと考えられる。症状や発症日などとの関連で、真に偏りが生じないように振り分けられていたのか。
  4. (関連してさらに厳密にいうなら)実験法のスタンダードである「2重盲検(ダブルブラインド)法」に適合していたか。2重盲検法というのは、被験者だけでなく実験者側にも、研究の目的や仮説を伏せて実験をする方法だ。今回の状況ではそこまでは無理だろうが、少なくとも唾液採集者やデータ解析者には、特定サンプルがどちらの群になるかを知らせずに進めることはできたはずだ。
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筆者

下條信輔

下條信輔(しもじょう・しんすけ) 認知神経科学者、カリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授

カリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授。認知神経科学者として日米をまたにかけて活躍する。1978年東大文学部心理学科卒、マサチューセッツ工科大学でPh.D.取得。東大教養学部助教授などを経て98年から現職。著書に『サブリミナル・インパクト』(ちくま新書)『〈意識〉とは何だろうか』(講談社現代新書)など。

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