新型コロナは「恐怖の感染症」ではない
安倍首相の辞任会見とともに動き出した対策の根本的な見直し
唐木英明 東京大学名誉教授、公益財団法人「食の安全・安心財団」理事長
このような目まぐるしい動きの中で、「新型コロナはインフルと同等のリスク管理でいい」という正論は消えた。指定感染症の2類相当に指定したことで対策が決定し、議論の余地がなくなったのだ(図)。人々の意識も変化し、新型コロナはインフルよりずっと恐ろしい感染症という常識が出来上がった。さらに「感染することが悪」という価値観ができて、感染者を「ケガレ」として扱い、偏見と差別の対象にする風潮までが生まれた。まさに「情報感染」が起きたのだ。

新型コロナをめぐる状況
巷に流される「インフルより恐ろしい理由」の一つが、治療薬とワクチンがないことである。しかしこの議論は逆だ。インフルは治療薬もワクチンもあるにもかかわらず、年間1万人の死者が出る。どちらもないのに死者が少ない新型コロナと、どちらが恐ろしいのかを考えるべきである。
そうはいっても「インフルの致死率は0.1%なのに、新型コロナの致死率は2%と20倍も高いから恐ろしい」という話もある。しかし「恐ろしさ」は、実際の死者数という数字で判断すべきである。恐ろしい感染症として知られているスペイン風邪の死亡者は39万人で、新型コロナの死者の300倍である(表1)
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