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アップルの「独占的な市場支配」に反旗

エピックの人気ゲーム「フォートナイト」が提起した巨大プラットフォームの問題点とは

深町卓史 プログラマー、テクニカルライター

 世界中に3億5千万人を超すプレイヤーがいる米エピックゲームズ社の世界的な人気ゲーム「フォートナイト」が8月13日、スマートフォン向けアプリ配信サービス「アップストア」と「グーグルプレイ」から、規約違反を理由に削除された。これを受けてエピックは同日、アップストアを運営するアップルを米連邦地裁に提訴。さらにSNSを通じて「#FreeFortnite(フォートナイトに自由を)」というキャンペーンを呼びかけ、真正面から徹底抗戦を仕掛けた姿勢が話題となっています。

「フォートナイト」はパソコンやスマホ、ゲーム専用機などさまざまな機種で遊べる
 フォートナイトはスマートフォンや携帯情報端末だけでなく、ニンテンドースイッチやプレイステーション4などの家庭用ゲーム機やパソコンでも楽しめるオンラインゲームです。2017年に登場して以来、「100人が同時にゲームを開始して、最後の1人になるまで戦う」というようなバトルロイヤルと呼ばれるジャンルの代表的ゲームとして、人気を博してきました。最近ではゲーム内のスクリーンでハリウッド映画を上映したり、米津玄師さんがバーチャルライブを開催したりと、旧来のゲームの枠を超えるような大規模イベントを連発して、注目を集めています。

アップルが徴収する手数料は30%

 そんな中でフォートナイトが突如、巨大プラットフォームであるアップルに宣戦布告をしたのです。エピックが公表した「フォートナイト メガプライスダウン」では、iPhone用とAndroid用の新しいゲーム内課金画面を掲載し、「新しい支払い方法、Epicディレクトペイメントを発表します」と告知しました。

 そこには、こう書かれています。

現在、AppleとGoogleの支払いオプションを使用すると、AppleとGoogleは30%の手数料を徴収するので、最大20%のプライスダウンは適用されません

 フォートナイトは基本プレイを無料で楽しめるソーシャルゲームのひとつです。アプリを無料でダウンロードして遊べ、ゲームに登場するキャラクターやアイテムなどをゲーム内課金を通して購入することができます。このゲーム内課金の決済システムが、アップルの「アップストア」とグーグルの「グーグルプレイ」でそれぞれ提供されているのですが、30%の手数料が徴収されます。

 この手数料こそ、両社の貴重な収入源のひとつとなっているため、アップルとグーグルはともに、他の決済手段を用いることをアプリ開発者向けの規約で禁止しているのです。

アップルが運営する「アップストア」の規約画面。グーグルにも同様の規約がある
 アップルはApp Store Reviewガイドラインの中で「Appのコンテンツまたは機能は、App内課金を使用して解放する必要があります」と定めています。またグーグルもデベロッパープログラムポリシーで、「支払い方法としてGoogle Playアプリ内課金を使用しなければなりません」と定義しています。

 今回のエピックの措置は、これらの規約に違反する形でアプリ配信サービスの課金を回避し、手数料を伴わない自社独自の直接的な課金サービスを導入しました。その際、独自の課金サービスの方が割安であることを利用者に見せるという挑発的な禁じ手を打ったのでした。

「規約違反」でアップル側は配信を削除

 これに対してアップルとグーグルは、エピックが独自の課金システムを導入したことを規約違反として、アプリストアから即日、フォートナイトを削除しました。エピックもすぐさま「アプリ配信を独占した上での高額な手数料は競争を阻害している」として、アプリ削除の差し止めを求めて米カリフォルニア州の連邦地裁に提訴した上で、フォートナイトの利用者に向け、アップストアに対する戦いに参加するようにと呼びかけました。ソーシャルメディアを通じたハッシュタグ「#FreeFortnite(フォートナイトに自由を)」キャンペーンです。

エピックが公開したアップル批判のパロディー動画

 このキャンペーンは周到に準備されたものでした。アップルが1984年にコンピューター「Macintosh」を発売した際、当時のコンピューター市場を席巻していたIBMを独裁者ビッグブラザーに見立てて打破する伝説的なCM「1984」が話題になりましたが、このCMのパロディー動画まで用意していたのです。まるで、かつての革命者だったアップルがいまや独裁者になったかのように印象づける動画です。

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