米山正寛(よねやま・まさひろ) ナチュラリスト
自然史科学や農林水産技術などへ関心を寄せるナチュラリスト(修行中)。朝日新聞社で科学記者として取材と執筆に当たったほか、「科学朝日」や「サイアス」の編集部員、公益財団法人森林文化協会「グリーン・パワー」編集長などを務めて2022年春に退社。東北地方に生活の拠点を構えながら、自然との語らいを続けていく。自然豊かな各地へいざなってくれる鉄道のファンでもある。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
幅が広い尾の化石が新たにモロッコで見つかり、再び注目を集める遊泳生活説
四足歩行で水中に進出し、魚などを食べていたとされる約1億年前の肉食恐竜スピノサウルス。アフリカのモロッコ東部で尾の大部分などの新たな化石が見つかり、水の中を泳ぐのに適した尾を持っていたと、米デトロイト・マーシー大学をはじめとする国際研究チームが科学誌ネイチャーに今春発表した。最近はスピノサウルスの水中進出を疑問視する見方も出ていたが、水の中での生活に適した体だったとの解析結果が改めて示された。
スピノサウルスは獣脚類に属する大型の肉食恐竜で、その体長はティラノサウルスよりも長い15メートル、体重は7トンもあったという。背中には巨大な帆のような構造を持ち、口はワニのように細長く、円錐形の歯が密生していた。その巨体については何度も想像図が描かれてきたが、どれも他の恐竜たちと同様に先端へ向かって細くなる長い尾をつけていた。
最初の発見は1912年だった。ドイツの古生物学者、故エルンスト・ストローマー博士がエジプトで発掘した化石について、1915年に論文発表した。背骨(胴椎)には2メートル近くもある長いとげ(神経棘)があり、背中に帆を持つ姿をしていたと、当初から推定された。そして獣脚類としては最大級の恐竜だろうとみなされた。
だが、この化石が収蔵されていたドイツのバイエルン州立古生物・地質学博物館は戦時中の1944年4月に空襲を受けた。そして貴重な化石は建物もろとも焼失してしまう悲運に見舞われた。それ以来、スピノサウルスは全身像をつかみきれない謎の恐竜となっていた。
ところが2013年、米シカゴ大学の研究員だったニザール・イブラヒム博士が、モロッコ東部で新しいスピノサウルスの化石を発見した。これにストローマー博士の第1号化石や、他に発見された部分的な化石などを組み合わせて、2014年に全身骨格が復元された。
きゃしゃな後ろ脚から、他の獣脚類と同じような二足歩行ではなく四足歩行をしていた姿になった。骨盤は小さく、重心が前よりであることからも、四足歩行が妥当と考えられた。大型の獣脚類は体を軽くするために四肢の骨の内部を中空にしていることが多いが、
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