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医療政策学から斬る「コロナ騒動」(下)

移行戦略、研究戦略、究極戦略という3つの提言

長谷川敏彦 一般社団法人未来医療研究機構代表理事

Ⅴ 3つの提案

 コロナ騒動について衝撃、失敗、根拠、評価の分析でまとめた12項目から総括して浮かび上がるのは、2つの曖昧さである。政策決定過程における基本3点セット、すなわち「目的・戦略・戦術」の曖昧さが一つ目、政策実施過程において「政策決定者・専門家・国民」が共有すべきリスクコミュニケーションの曖昧さが二つ目である。そこで方針のための目的、実践のための戦術を踏まえて、具体的に3つの戦略を提案したい。

提案1 移行戦略--国民をリスク別に3層に分け、グループ別の政策を

1 騒動の行程

 当初から想定されていた新型コロナウイルス感染症の流行期間1.5-2年強を実際に当てはめると、終息は早くて2021年の秋から、遅ければ、2022年の秋以降になる。感染が終息するのは一定の集団の多くのメンバーが罹患するか、ワクチン接種により免疫を獲得すること、すなわち集団免疫の確立が必要とされてきた。

 しかし、日本では感染者は少なく感染による集団免疫は論外である。ワクチンは正常人に接種するので安全性の慎重な確認が必要なうえ、集団免疫到達までの接種が2年以内に完了できるとは考えられない。結局、新型インフルエンザが半年で弱毒化したように、コロナも弱毒化で幕を閉じる可能性が一番高いかもしれない。

 この間、病院・介護施設、家庭、特殊な接待など濃厚接触が避けられない場でのクラスターの、出たり収まったりがだらだらと長期にわたり続くことになる。そのたびごとに「感染予防か経済活動か」と騒ぐのは壮大な無駄である。

2 3層グループ化

 まずこの2択は間違った設問である。持続戦となった2年の間の戦略的目標は死亡を予防することであり、そのために重症者を出さないことである。感染者を出さないことではない。重症化しにくい人の場合は感染は決して悪いことではない。軽症で治癒し、かつ罹りにくく、うつしにくくなるからである。

拡大図14 全国民を3つのリスクグループに分けたときの政策ポイント
 リスクマネジメントのために、まず全国民を今判明しているリスク要因で3つに層別化することを提案したい。若年者、特に40歳以下で健康リスクを持たない人、高齢者と同居していない人は「低リスクグループ」、高齢者及び若年者で健康リスクを持つ人、高齢者と同居している人は「高リスクグループ」、病院や介護施設の入院入所者など不具合や病気を抱えていることが多く、従業者と予防距離が取りにくい濃厚接触が前提の集団は「超高リスクグループ」となる。そしてそれぞれに対し生活の仕方、感染した場合の対応法をあらかじめ周知しておく(図14)。

3 リスク学習

 日本の場合は、これまでのリスクが自然災害中心で対象が農業と想定されてきたため、人為による管理が難しく、全て受け入れるか拒否するかの2択の文化が根付いてきたように思われる。西洋では戦争などの人災が主で対象が商業と想定されることが多く、リスクを取れば得られるものもあると考える。つまりトレードオフの考え方である。日本でもコロナ騒動を機会に、合理的で容認可能なリスクの考え方やそれに基づいて選択するトレードオフの考え方を学ぶべきである。

4 場所ごとの課題

 介護施設や病院では

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筆者

長谷川敏彦

長谷川敏彦(はせがわ・としひこ) 一般社団法人未来医療研究機構代表理事

15年の外科医生活、ハーバード大学公衆衛生大学院での活動を経て1986年に旧厚生省に入省、「がん政策」「寝たきり老人ゼロ作戦」を立案。国立医療・病院管理研究所医療政策研究部長、国立保健医療科学院政策科学部長として「健康日本21」「医療計画」「医療安全」等に関与。日本医科大学医療管理学主任教授を経て、2014年に未来医療研究機構を設立。その後、過去40年間の日本の医療制度改革の歴史分析を英語で出版、日本医師会公衆衛生委員会にて健康の新定義(2018年)、健康格差の答申(2020年)に参与。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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