科学的根拠の欠如が招いた医療危機、患者差別、経済損失
2020年09月13日
新型コロナ感染症(COVID-19)に対する国民の意識も少しずつ変わり始めている。最近になってやっと「医療資源や社会生活を温存しながらの緩やかな感染の広がり」を許容する風潮が見られ始めてきた。毎日メディアで公表される科学的根拠の希薄な「感染者(PCR陽性者)の絶対数」に一喜一憂する空気も軽減している気がする。「感染の拡大」は必ずしも「健康被害の拡大」とイコールではないことが認知されてきたのだろう。遅ればせながら、政府、厚労省も特措法の改正を含むコロナ政策の見直しの議論を始めたようだ。
今後のコロナ政策の判断基準として必須なのは「感染による致死率」「ウイルス(SARS-CoV-2)の病原性(毒性)」という科学的エビデンスである。
国立感染症研究所の病原体ゲノム解析研究センターは、SARS-CoV-2ゲノムのハプロタイプネットワーク解析によって、現在の国内流行のウイルス株は欧州型ウイルス株から変異した、第1波とは異なるタイプのウイルス感染であることを明らかにしている。
この「高齢者の致死率は第1波と第2波では変わっていない」という見解は、政府対策分科会に報告され、全国のメディアを通じて国民に発信された。鈴木氏の提示したこの資料のデータを検証してみる。
累計の死亡者数と感染者数から、単純に全国の致死率(死亡者数÷感染者数)を計算すると、
・第1波(1/16~5/31)900÷16784=5.4%
・第2波(6/1~8/19)219÷41472=0.5%
と、約10分の1に「大幅に低下」しており、「軽度低下」とは言えない。ところが、この資料には「致死率は発症から死亡までの期間を調整して算出したものであり、累積死亡者数を累積感染者数で除した値とは異なることに注意」と脚注でただし書きをしており、計算に用いた数値は各期間の観察終了直前の7日間平均であるとしている。この結果、致死率は「5/25~5/31」の 6.0%に対して、「8/13~8/19」は4.7%ということである。
しかしながら、この計算の出典・根拠となる数字は示されていない。
そもそも、この第1波と第2波の比較対象自体が適切とは到底思えない。「観察終了直前の7日間」である5月25日から31日の期間は、すでに第1波はピークアウトしており、一方で8月13日から19日までは第2波のピークの最中である。
また、この第2波の致死率4.7%という数字はにわかには信じがたい。上記の脚注に従って「死亡までの期間を調整」し、発症から死亡までの期間を十分に長くとって1カ月としても、
・6/1〜7/19の感染者数8276人
・6/1〜8/19の死亡者数219人
であるから、致死率は219÷8276=2.6%と計算される。4.7%などという高値にはなり得ない。
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