日本で暮らす300人、世界に散らばる100万人から日本政府は目を背けるな
2020年09月16日
100万人以上が故郷を追われ、世界中でディアスポラ(民族離散)状態になっている人々がいる。それはロヒンギャ。一般的に、ロヒンギャ語(ベンガル語のチッタゴン方言の一つ)を話すミャンマーのラカイン州に住むイスラム系少数民族のことを指す。1970年からの弾圧で国籍を奪われ、2017年には大虐殺が起き、70万人のロヒンギャが隣国バングラデシュのコックスバザールに逃れた。国連のアントニオ・グテレス事務総長は、翌2018年に難民キャンプのあるコックスバザールを訪れ、ロヒンギャを「最も基本的な権利を認められず、最も差別的な扱いを受けている」民族の一つと言った。
現在、日本にも約300人のロヒンギャの人々がいる。しかし日本政府は「ロヒンギャ」という言葉は使わずに、ミャンマー政府の見解に従って「ラカイン州のムスリム」と言っている。そして難民申請を却下し続けている。日本にいる彼ら彼女らもまた、「最も基本的人権を脅かされた人々」と言わざるを得ない。このまま無関心で放置していることは人道的な罪となろう。
かく言う筆者にとっても、かつてロヒンギャ問題は報道で知るニュースのひとつに過ぎなかった。しかし、昨年、タイで開かれた国際平和構築者会議に参加し、ロヒンギャ問題に取り組む研究者や活動家、そして何よりロヒンギャ当事者にお会いし、この状況を一刻も早く変えるべきだと強く思うようになった。そしてインターネットで調べるうちに、日本ではロヒンギャの方々が群馬県館林市に多くいらっしゃることを知り、後述するアウン・ティンさんとつながることができた。
館林のロヒンギャは260人、日本にいるロヒンギャの約9割に当たる。館林市は人口約7.5万人の地方都市である。駅の近くには商店や銀行などがあり、イスラム教徒向けの「ハラール」のマークがついた食料品が並ぶ雑貨店があり、イスラム教徒の女性が被るヒジャブも売られている。市内にはイスラム教のモスクも2カ所ある。
多くは、90年代や2000年初頭にミャンマーでの迫害から逃れ、日本に渡ってきた人々やその家族である。2005年までに来日したロヒンギャは70人ほどだが、家族を呼び寄せたり日本で子どもが生まれたりして、現在の数になっている。
なぜ館林に集まったのかというと、
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