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オンラインがあぶり出す大学の真の課題

教員個人の問題ではなく、組織の在り方が問われている

三田地真実 行動評論家/言語聴覚士

例年よりも人数を大幅に減らして実施された名古屋学院大・名古屋キャンパスのオープンキャンパス・模擬講義=2020年7月11日、名古屋市熱田区、佐藤剛志撮影

 「授業の質が学費に見合っていない」という怒りの声がついに学生たちから上がった(MBSニュース9月14日)。関西学院大学4年生が学生や保護者137人を対象に行ったアンケートの結果、「コロナ禍での授業は学費にふさわしいか?」で84%が「いいえ」と答えたという。8月には立命館大学でも学部生の約1割が退学を考えているというアンケート結果が公表され、その背景として「対面授業や課外活動が制限された上、学費への不満や経済的な不安が大きいこと」が挙げられている(日本経済新聞8月20日)。

 2020年度前期はとにかくオンラインでもなんでも授業をやるしかない!とそれまで対面授業しか行ったことのない多くの大学教員が必死で遠隔授業に取り組んできた。学生もその大変さをよくわかってくれていたと思う。しかし、後期が始まりつつある今、「あの授業をまた受けるのか」という、いよいよ「授業そのもの」に対する学生の失望が冒頭のアンケートの結果に表れたのであろう。

遠隔授業があぶり出す教員の授業力

 正直なところ、コロナ禍の影響によって強いられた突然の授業形態の変更は、教員がそれまでどの程度、授業のデザインを丁寧に行っていたか否かをあぶり出す結果となっている(立教大学経営学部中原淳研究室ブログ)。立教大学教授の中原淳氏の「元々あった能力差がさらに広がっている」という指摘は、筆者も様々なエピソードを聞くにつれ、また自分自身が改めてオンライン授業を企画・実施する際にも同感する。

 筆者が講師となって大学の教員対象に行ったオンライン授業の研修においても、全体の約3割が「コロナ禍以前から授業全体、および毎回の授業デザインを丁寧に行っていた」と答えている一方で、約1/4は「授業シラバスを作るくらい」、7%は「行き当たりばったりだった」と回答した(図1)。さらに、「回答せず」が全体の1/4もあった。

 自由参加形態のこのような研修に参加している教員は「オンライン授業を何とかうまくやりたい」という意欲を持った、いわゆる意識が高いグループであり、その陰には研修に参加しない何倍もの教員が実際は存在していた。そのことを加味すると、全体のごく少数がコロナ禍以前から授業をしっかり行っていたと推測される。残りの大多数は、シラバス程度、あるいは行き当たりばったりな授業を行っていても、何とかなっていたのがこれまでの「対面授業」なのである。

「その場しのぎの授業」から「新しいスタイルの授業」を模索する転換点

 この半年、

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