気候危機を救う「3.5%」は誰なのか? 上
気候マーチから1年後、変わったことと変わらなかったこと
宮﨑紗矢香 株式会社大川印刷勤務、Fridays For Future Tokyo元オーガナイザー
発端は、大人への憤り
「嫌だって言いたいです」
私はそう、確かに言った。2019年9月26日。NHK「クローズアップ現代+」生出演の現場で、きっぱりと言い放った。
あれから早1年が経った。新型コロナウイルスの台頭によって、世の中はすっかり様変わりしたともいえるし、何も変わらず長く隠されていたものがただあらわになった、それだけのようにも思える。
去年の夏、私は「気候正義」に夢中になっていた。就職活動で理不尽な発言をする大人に憤りを抱いていた折、スウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥンベリに出会った。

デモ行進の出発前、プラカードを掲げて気候危機を訴える参加者たち=2019年9月20日、東京都渋谷区、恵原弘太郎撮影
「あなたたちは、誰よりも自分の子供が大切だと言いながら、子供たちの目の前で彼らの未来を奪おうとしている」。彼女の発言は、私が「大人」に抱いていた憤りを見事に代弁していた。「大人は、白黒はっきりつけられるものなどないと言います。しかし、それはうそです。とても危険なうそです。私たちは、1.5度以上の温暖化を防止するか、しないか、どちらかです」
16歳の少女の言葉を聞いて、世の中を知らないのはむしろ、経済成長しか頭にない大人の方だと思った。そして、これからの時代を生きる私たちの世代こそ、彼女のように自らの未来が脅かされていることを認識し、ためらわずはっきりと大人へ向けて物申す権利があるのだと実感した。
当時は、同じ大学に通う友人や、電車で見かける若者が皆、一様に黒いスーツを着て、黒く染めた髪で歩いているのを見かけると、居ても立っても居られなかった。
どうして? 理不尽な大人の発言に行儀良く従うことができるのか。なぜ? きれいなうたい文句を疑うことなく、いとも簡単に「Yes」と言えるのか。たまらない気持ちになった。
そして私は、グレタに倣った。思考停止の固定化されたレールを外れてみたくて、学校ストライキムーブメント、Fridays For Future Tokyoに入った。以降、自らもあっけにとられるようなスピードで、世論や社会に対して声を上げる「活動家」に近づいていった。