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容量市場は、再エネ潰しの最終秘密兵器だ

大手電力には棚ぼた利益、ツケは国民の電力料金に転嫁

明日香壽川 東北大学東北アジア研究センター/環境科学研究科教授

 9月14日、政府は、容量市場の入札結果を発表した。約定価格(市場で売買が成立した価格)は約1万4137円/kwとなり、政府が定めた上限価格とほぼ同額になった。

 この価格と市場の大きさから導かれる金額(1兆5987億円)を国民が負担することになる。約定価格は新設ガス火力発電の固定費を5割上回る水準であり、原発や石炭火力を含む既存設備を含めた全電源に適用される。

容量市場負担の仕組み(朝日新聞)
容量市場負担の仕組み(朝日新聞)
すなわち、今のままだと、毎年国民が、数千億円をすでに投資回収を終えた既設の原発や石炭火力に追加的に払うことになる。

 容量市場という言葉を、知っている国民の割合はほぼゼロだろう。容量市場は、いまだに電力市場を寡占している大手電力会社が、国民が知らないまま、「将来に起きるかもしれない電力不足」という十分には検証されていない「脅し」のもと、自社が持つ既設の原発や石炭火力を維持するための資金を国民のポケットから新たに取り立てて、同時に競争相手である再エネ発電や新電力会社をつぶすための「最終秘密兵器」として政府に導入を要求したものである。

 それによる国民経済やエネルギー・温暖化政策への負のインパクトは計り知れない。

 その問題点を具体的に述べる。

①1基で毎年60億円の棚ぼた利益

 容量市場によって、すでに投資回収している原発や石炭・石油火力発電などに、発電能力を維持するためだけに、経過措置などを考慮しても1基(100万kW想定)あたり毎年約60億円が実質的な補助金として供与される。

容量市場によって原発や石炭火力などの発電設備に巨額の資金が流れる。写真は玄海原発=2020年3月、佐賀県玄海町、朝日新聞社ヘリから、堀英治撮影  容量市場によって原発や石炭火力などの発電設備に巨額の資金が流れる。写真は玄海原発=2020年3月、佐賀県玄海町、朝日新聞社ヘリから、堀英治撮影
まさに棚ぼた利益であり、その原資は、消費者が払う電気代の値上げ分である。例えば東電の場合、約4000万kWの火力発電設備を保有しているので毎年約2400億円という巨額な補助金が新たに消費者(国民)から東電に
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