民主化とバーチャル交流の拡大が進むなか、日本の足を引っ張る著作権法制
2020年10月06日
新型コロナウイルス感染症の世界的流行のため社会活動が大きく制限されている。私がカブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)の機構長を務めている東京大学でも、理論物理学研究所所長を務めているカリフォルニア工科大学でも、2020年春にはすべての授業がオンラインになった。また、入構制限のため研究活動も影響を受けた。
こうした制限は徐々に緩和されつつあるが、自宅待機などの間に急速に広まったデジタル革新、特にバーチャルな世界の開拓は、コロナの世界的流行が収束しても社会のありかたに不連続な変化をもたらすであろう。そこで、私たち研究者がコロナにどのように対処してきたかを紹介し、そこで学んだことがポストコロナ社会にどのように生かせるかを考えてみたい。
一方で、日本にとって有利な状況もある。これまでのところ、日本は欧米諸国に比べて新型コロナウイルス感染症の流行抑制に成功しているので、海外のトップレベルの研究所の研究者からも「日本に行って研究がしたい」という声を聞いた。「これは海外から才能のある研究者を呼び寄せるチャンスだ」と思い、Kavli IPMUで緊急にいくつかのプログラムを立ち上げた。
海外には、次の職が決まっているのに、渡航制限などのために職に就けずに宙ぶらりんになっている優秀な大学院生やポスドクが何人もいる。そこで、そのような人を次の職に就けるまで短期で雇用するプログラムを始め、「ポスドク・アンパッサン」と名付けた。アンパッサンというのはチェスの用語で、通過途中の歩兵を捕獲することを意味する。このプログラムのおかげで、以前にKavli IPMUのオファーを断ったような優秀な人も「捕獲」することができた。
また、海外の一流研究機関の教授やポスドクで、休職してKavli IPMUに来て、より安全な環境で研究を続けたいという人を受け入れる「セーフヘーブン・フォー・スカラー」というプログラムも始めた。
Kavli IPMUでは、コロナ前から、研究者が複数の機関と契約し、合意された従事比率に基づき就労する「クロスアポイントメント」を行ってきた。これは東大内では初めての試みであった。我々の成功によって、この制度は学内、さらに日本の他大学にも波及した。私自身も、機構長の任期中は、東大とカリフォルニア工科大学のクロスアポイントメントになっている。コロナ時代になり、様々な業務がバーチャル空間で行えることが明らかになったので、今後は「バーチャル・クロスアポイントメント」のような雇用形態も考えていくべきだと思う。
私自身も、
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