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「法律論」「学問の自由」をはるかに超える大問題

学術会議の会員任命拒否には誠実な説明が必要だ

須藤靖 東京大学教授(宇宙物理学)

 ちなみに、学術会議に約10億円程度の税金が使われていることを問題視する意見が散見されるが、これは世界的にみて決して多い金額ではない。例えば全米アカデミーズは約230億円だとのことである。それ以外の各国との比較も参照のこと。

拡大東京・六本木の日本学術会議庁舎[CC BY-SA]
 実際、学術会議の予算は、組織を運営するために必要な経費に限られている。会員・連携会員は給料をもらっているわけではなく、実際に出席した会議に対する旅費と会議費の規定額を受け取っているに過ぎない。つまり、出席した会議以外に膨大な時間を必要とする会員の作業・活動は実質的に手弁当で行われているのだ。この点は一部の誤解を解いておきたいと思う。その上で、独立性をより高めるために学術会議の予算の一部を外部資金でカバーするべきであるとの意見も検討する余地はあるかもしれない。

 ただし、学術会議を完全に政府と独立な組織にすることには同意しない。その結果、学術界からの意見が適切に政府に届かなくなり、一部の都合の良い意見だけを学術界の総意であるかのように操作されてしまう危険性が懸念されるからだ。そして、今回の問題はまさにそれが政府の意向として起こりつつあることを示している。

 以上をまとめれば、学術会議の活動が社会にあまり認知されていなかった点については、広報活動を含めて改善が必要である。また、組織の体制についても検討すべき余地は残っている。しかしながら、学術会議が社会的に実際に重要な役割を果たしていることは確かであるし、そこで得られた結論のみならずそれに至る過程での議論を含めてホームページ上で丁寧な文書として公開されていることは強調させていただきたい。

学術会議だけの問題でなく

 さて、今回の学術会議会員任命拒否問題の本質を、どのように位置づけるかについては様々な解釈がありえる。また

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筆者

須藤靖

須藤靖(すとう・やすし) 東京大学教授(宇宙物理学)

東京大学大学院理学系研究科物理学専攻教授。1958年高知県安芸市生まれ。主な研究分野は観測的宇宙論と太陽系外惑星。著書に、『人生一般二相対論』(東京大学出版会)、『一般相対論入門』(日本評論社)、『この空のかなた』(亜紀書房)、『情けは宇宙のためならず』(毎日新聞社)、『不自然な宇宙』(講談社ブルーバックス)などがある。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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