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日本学術会議と海外のアカデミーの比較

任命拒否の理由の明示がまず必要、その後の議論のためのファクトシートと提言

永野博 科学技術振興機構研究主幹、日本工学アカデミー顧問

拡大アカデミー・フランセーズ。フランス学士院は碑文文芸アカデミー、科学アカデミー、芸術アカデミー、道徳政治アカデミーと合わせて計5つのアカデミーで構成されている。
 日本学術会議の会員候補者の一部が任命されなかったことが問題になっている。多様な意見を尊重する民主主義国家として、任命されなかった理由が明らかにされない限り国民は納得しないであろう。

 学術会議の在り方については、任命拒否の理由が明らかにされてから議論を始めるべきものである。それを確認したうえで、本稿では日本学術会議と海外のアカデミー、特にこれまでの長い歴史の中で科学を育み育ててきた欧米のアカデミーとの比較を行ってみたい。

自発的にできた集団を後から国王や政府が公認

 まずアカデミーとは何か。デジタル大辞泉によれば、「西洋近代諸国で、学問・芸術に関する指導者・権威者の団体。学士院。翰林院」とある。簡単に言えば、それぞれの国で「科学者を代表する権威のある機関」ということになる。

 ではこれらのアカデミーはどのようにできたのであろうか。面白いことに、著名なアカデミーはどれも出自は自然発生的な集まりであり、これが長い時間をかけて発展し、その間に、国王や政府から公的な認証を得て活動しやすくしてきた歴史がある。

 フランス科学アカデミーは革命での断絶を乗り越えて発展してきたし、ドイツのナショナルアカデミー「レオポルディーナ」は中世ヨーロッパにおいて伝染病で荒廃した都市を救うために集まった医師の活動を神聖ローマ帝国レオポルト1世が公認したところから始まった。英国や米国でも、科学者の自発的集団を後から国家が取り上げている。

 このため、どのアカデミーも組織としては政府の機関ではなく、在野の独立した組織である。だからといって政府から財政援助を受けないわけではない。どこもプロジェクトを外部から引き受け資金を獲得したり、寄付を募ったりするほか、政府からの補助を受けている。それによりアカデミーの独立性に影響があってはならないので、それぞれ腐心している。

 スウェーデン工学アカデミーでは国家からの補助は8%弱であり、国家からの影響を受けないために「これ以上にするつもりはない」という考えだ。フランスでの考えは、国家からの補助については国が何かを言うことはないので独立性に全く影響を及ぼさないが、産業界から支援してもらうと色眼鏡で見られるので注意が必要ということである。政府からの補助金の占める割合はアカデミーにより異なるが、国家がアカデミーの活動を財政的に援助し、だが何も口を挟まないという点は共通している。

独立性を維持する根幹は会員選考

拡大日本学術会議も若手アカデミーを作った。第1回若手アカデミー会議の記念写真=2018年12月28日、日本学術会議のHPより
 この独立性を維持するための根幹は会員選考にある。学術界での最高権威を維持、確立するため、どのアカデミーでも会員選びを最重要事項として位置づけるとともに、会員は自らの組織が選んでいる。会員の身分は、原則、終身維持できる。これでは硬直化がおこるとの考えもあるため、一定年齢で会員の活動の義務を免除するなどの工夫をしているところもある。近年は、若い研究者を若手アカデミー会員に任期付きで任命し、提言などの活動をさせる例も見られる。

 では、これらのアカデミーはどのような仕事をしているのであろうか。主要活動としては、提言と栄誉の授与があげられる。

 提言は

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筆者

永野博

永野博(ながの・ひろし) 科学技術振興機構研究主幹、日本工学アカデミー顧問

慶應義塾大学で工学部と法学部を卒業。科学技術庁に入り、ミュンヘン大学へ留学、その後、科学技術政策研究所長、科学技術振興機構理事、政策研究大学院大学教授。OECDグローバルサイエンスフォーラム議長を6年間、務めた。現在、日本工学アカデミー顧問など。著書:『世界が競う次世代リーダーの養成』、『ドイツに学ぶ科学技術政策』

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