任命拒否の理由の明示がまず必要、その後の議論のためのファクトシートと提言
2020年10月16日
学術会議の在り方については、任命拒否の理由が明らかにされてから議論を始めるべきものである。それを確認したうえで、本稿では日本学術会議と海外のアカデミー、特にこれまでの長い歴史の中で科学を育み育ててきた欧米のアカデミーとの比較を行ってみたい。
まずアカデミーとは何か。デジタル大辞泉によれば、「西洋近代諸国で、学問・芸術に関する指導者・権威者の団体。学士院。翰林院」とある。簡単に言えば、それぞれの国で「科学者を代表する権威のある機関」ということになる。
ではこれらのアカデミーはどのようにできたのであろうか。面白いことに、著名なアカデミーはどれも出自は自然発生的な集まりであり、これが長い時間をかけて発展し、その間に、国王や政府から公的な認証を得て活動しやすくしてきた歴史がある。
フランス科学アカデミーは革命での断絶を乗り越えて発展してきたし、ドイツのナショナルアカデミー「レオポルディーナ」は中世ヨーロッパにおいて伝染病で荒廃した都市を救うために集まった医師の活動を神聖ローマ帝国レオポルト1世が公認したところから始まった。英国や米国でも、科学者の自発的集団を後から国家が取り上げている。
このため、どのアカデミーも組織としては政府の機関ではなく、在野の独立した組織である。だからといって政府から財政援助を受けないわけではない。どこもプロジェクトを外部から引き受け資金を獲得したり、寄付を募ったりするほか、政府からの補助を受けている。それによりアカデミーの独立性に影響があってはならないので、それぞれ腐心している。
スウェーデン工学アカデミーでは国家からの補助は8%弱であり、国家からの影響を受けないために「これ以上にするつもりはない」という考えだ。フランスでの考えは、国家からの補助については国が何かを言うことはないので独立性に全く影響を及ぼさないが、産業界から支援してもらうと色眼鏡で見られるので注意が必要ということである。政府からの補助金の占める割合はアカデミーにより異なるが、国家がアカデミーの活動を財政的に援助し、だが何も口を挟まないという点は共通している。
では、これらのアカデミーはどのような仕事をしているのであろうか。主要活動としては、提言と栄誉の授与があげられる。
提言は
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