人とクマとの共存には、魅力的な食べ物をなくし、棲み分けを考えていく必要がある
2020年10月30日
今秋も各地でツキノワグマ(以下、クマ)の人里への出没が相次いだ。中には、温泉街や商業施設の中にまで入り込むクマも出現し、おおいにメディアを賑わせた。しかし、残念ながら、クマとの接触により数名が亡くなられるとともに、多くの方がけがを負ってしまった。ここでは、なぜクマは人里に出没し、どうしたら人との遭遇をなくすことが出来るのか、そしてクマとの共存をどう進めるのかについて考えたい。
一方、ドングリにはある特徴がある。ドングリは繁殖戦略の一環として、豊作の年と凶作の年を繰り返すとともに、同じ森の中でドングリの実りの程度が同調する。つまり、ドングリが豊作の年には森の多くの木にドングリが実り、凶作の年には森全体からドングリはほとんど姿を消してしまう状況となる。ドングリが少ない年には、クマは食べ物を探すために、春から夏にかけて生活していた場所から遠く離れた場所にまで移動することとなる。しかし、このことだけが必ずしもクマの人里への出没に直結するわけではない。
基本的にクマは臆病な動物で、人間を避けて行動する。たとえば、森で暮らすクマは昼行性であるが、人里に近づく時は夜行性となる。そういった習性をもつクマにとって、よほどのメリットがない限りはわざわざ森の外へは踏み出さない。それでも、多くのクマが森から出るのには、魅力的な食べ物の存在がある。具体的には、未収穫のカキやクリ、生ごみなどで、クマはそれらに誘われることで人里の中へ入り込んでしまう。
ドングリの結実の豊凶は遠い昔から存在してきたのに、2000年以降になって秋にクマが大量に人里に現れ、駆除される現象が頻発し、近年は常態化してきた。その原因の一つに、
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