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「持続可能な地球機構」の創設を

パンデミック後の世界経済に向けて

西村六善 日本国際問題研究所客員研究員

 今回のパンデミックはプラネタリー・ヘルスへの打撃の問題だと論じられている。国際関係にも詳しい感染症対策の第一人者である國井修博士は、これは「プラネタリー・ヘルス」に対する人間社会の攻撃が引き起こしたものと言う。(『人類vs感染症 新型コロナウイルス 世界はどう闘っているのか』CCCメディアハウス、2020年)(『緊急公開:人類と感染症、闘いと共存の歴史(全文)』Newsweek誌日本版 2020年3月17日号

 要するに人と自然の共生や共存が不調になっているのだという。つまりこれは地球環境の持続性を超えた人間活動が問題だという議論だ。

ドイツ連邦議会の建物を赤い布を持って取り囲み、地球温暖化対策を訴える人たち=2019年6月28日、ベルリン、野島淳撮影  拡大ドイツ連邦議会の建物を赤い布を持って取り囲み、地球温暖化対策を訴える人たち=2019年6月28日、ベルリン、野島淳撮影

 ヒトと自然との共生・共存の問題であれば、他にも事例はたくさんある。大気汚染、熱帯雨林の破壊、砂漠化、水質汚染、海洋汚染、水産資源の減少、温暖化、産業廃棄物・家庭廃棄物などの処理能力不足、プラスチック廃棄処理問題、人口爆発などがプラネタリー・ヘルスに打撃を与えている。すべて持続性の問題だ。それに、今回の事態は、例えば温暖化が制御不能になった時の全球的な衝撃の巨大さや深刻さを想像させる。

新型コロナは「序の口」

 しかも、米国の科学者は今回のパンデミックよりももっと深刻な「ビッグ・ワン」が来ると警告している。(「次のパンデミックに備えるにはーーCOVID19の教訓とは何か」〝Chronicle of a Pandemic Foretold Learning From the COVID19 Failre-Before the Next Outbreak Arrives〟ミネソタ大学感染症研究センター《CIDRAP》マイケル・オスターホーム所長、フォーリンアフェアーズ・リポート誌2020年8月号

 今回のことで、ゴルバチョフ氏やグテーレス国連事務総長が「人類は戦争を止めるべきだ」と論じている。それくらい巨大な衝撃を人類史に与えたのだ。しかし、専門家はこれはまだ「序の口」だという。企業と市民が今まで通り経済活動をやっていいはずはない。

対談するヨハン・ロックストローム氏と国谷裕子氏=2019年10月、北村玲奈撮影 拡大対談するヨハン・ロックストローム氏と国谷裕子氏=2019年10月、北村玲奈撮影
 パンデミックを契機に、遠距離化したサプライチェーンの問題を含め、非常に多くの深刻な問題が議論されているが、真に国際社会が問わねばならないことは、「人類社会は地球の持続性の問題とどう向き合うか?」という課題だ。ポツダム気候影響研究所のヨハン・ロックストローム氏は既に去年2019年の時点で、この問題を取り上げ、「プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)を知ってその枠内で行動するべきだ」と論じている。(地球の限界を知らずに「人新世」は生き抜けない 発展の限度を心得よ」2019年3月4日朝日新聞Globe+
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筆者

西村六善

西村六善(にしむら・むつよし) 日本国際問題研究所客員研究員

1940年札幌市生まれ。元外務省欧亜局長。99年の経済協力開発機構(OECD)大使時代より気候変動問題に関与、2005年気候変動担当大使、07年内閣官房参与(地球温暖化問題担当)などを歴任。一貫して国連気候変動交渉と地球環境問題に関係してきた。現在は日本国際問題研究所客員研究員。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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