桜井国俊(さくらい・くにとし) 沖縄大学名誉教授、沖縄環境ネットワーク世話人
1943年生まれ。東京大学卒。工学博士。WHO、JICAなどでながらく途上国の環境問題に取り組む。20年以上にわたって、青年海外協力隊の環境隊員の育成にかかわる。2000年から沖縄暮らし。沖縄大学元学長。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
環境のスーパーイヤーとなるはずだった2020年に起きたこと
2020年も残り少なくなった。後世、この年はコロナウイルス(COVID-19)が世界を席巻した年として記憶されることは間違いあるまい。だが本来ならば、まったく別の重要な1年になるはずだった。
実は本年は、気候変動、生物多様性、持続可能な社会づくり(SDGs)という将来を見据えた環境保全活動のいずれにとっても重要な節目の年であり、新型コロナが拡大する前の昨年12月、国連環境計画(UNEP)は「2020年は環境のスーパーイヤーだ」と呼びかけていた。その目算がコロナの蔓延で大幅に狂ってしまった。
スーパーイヤーとはどう意味だろうか。まず、気候変動対策の国際枠組みが2020年以降、京都議定書からパリ協定に変わることが挙げられる。そこで20年11月に英国のグラスゴーで開催されるはずだった気候変動枠組条約締約国会議(COP26)が注目されていたが、その開催は21年11月に延期された。
次いで生物多様性の問題がある。1992年6月にブラジルのリオデジャネイロで開催された地球サミットで、気候変動枠組条約とともに双子の条約として採択された生物多様性条約の締約国会議(COP10)が、2010年10月に名古屋で開催された。沖縄は生物多様性の島であり、その保全が極めて重要であることから、名古屋会議には筆者も含め多くの市民が参加した。
名古屋会議で採択されたのが「愛知目標」だったが、20年までの短期目標の実現に向けた取り組みが難航しており、沖縄でもその生物多様性が危機に瀕している。そこで20年10月に中国の昆明で開かれる予定だった締約国会議(COP15)が注目されていたのだが、これも2021年5月開催に延期された。
そして2015年に採択された国連の持続可能な開発目標(SDGs)も、20年からが「行動の10年」だった。しかしこのSDGsの実現に必要な資金の調達にとって、コロナによる経済活動の低下が障害となるのではないかと懸念されている。
そうした中、沖縄が固唾を飲んで見守っていた奄美・琉球諸島の世界自然遺産登録に向けた審査手続きが、やはりコロナの影響で大幅に滞っている。