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沖縄の生物多様性「最大の脅威」は基地建設の土砂搬入だ

環境のスーパーイヤーとなるはずだった2020年に起きたこと

桜井国俊 沖縄大学名誉教授、沖縄環境ネットワーク世話人

 日本政府は、奄美・琉球諸島が世界自然遺産登録基準のうちの「生態系」と「生物多様性」の2基準を満たすとして、2017年2月1日に国連教育科学文化機関(ユネスコ)に推薦書を提出した。これに対しユネスコの諮問機関の世界自然保護連合(IUCN)は、18年5月、「生物多様性」については「基準に合致する可能性がある」と評価しつつも沖縄島北部にある米軍北部訓練場の返還地の森林を推薦地域に加えるように求め、他方「生態系」については、推薦地域が4島内の24地域に分断されていることで「生態学的な持続可能性に重大な懸念がある」と指摘し、登録延期をユネスコに勧告した。

拡大沖縄本島北部のやんばるの森。手前は米軍北部訓練場=2018年4月19日、堀英治撮影

 そこで日本政府はいったん推薦を取り下げ、北部訓練場返還地を推薦地域に編入し、24カ所に分断されていた推薦地域を5カ所に再編し、推薦理由を「生物多様性」一本に絞って19年2月1日に推薦書を再提出した。当初の予定では、世界自然遺産委員会での登録可否の決定は20年6月29日~7月9日に中国・福州で行われるはずであったが、新型コロナウイルスの世界的蔓延拡大に伴い延期となっていたのである。

 そうした中、ようやく世界遺産委員会の日程が決まった。ユネスコは20年11月2日、世界遺産委員会委員国協議をオンラインで行い、次の委員会を21年6~7月に中国・福州で開き、他の推薦候補とまとめて登録審査することとしたのである。

米軍基地は分断する「森と海のつながり」

 筆者は、2017年4月19日掲載の論座「返還されない北部訓練場の自然の価値」において、米軍北部訓練場の存在がやんばるの森の保全に及ぼす影響について懸念を表明していた。だが今日まで、この懸念は払拭されていない。

拡大沖縄島北部の推薦区域(案)と緩衝地帯(案)=日本自然保護協会作成

 そもそも奄美・琉球諸島の世界自然遺産登録に向けた日本政府の当初の推薦は、まったく腑に落ちないものだった。沖縄島北部のやんばる地域の推薦地(図で赤線で囲まれた部分)は、その東側の多くに本来あるべき緩衝地帯(図で黒線で囲まれた部分)がなく、推薦地域がむき出しになっていた。

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筆者

桜井国俊

桜井国俊(さくらい・くにとし) 沖縄大学名誉教授、沖縄環境ネットワーク世話人

1943年生まれ。東京大学卒。工学博士。WHO、JICAなどでながらく途上国の環境問題に取り組む。20年以上にわたって、青年海外協力隊の環境隊員の育成にかかわる。2000年から沖縄暮らし。沖縄大学元学長。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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