住民投票の実施を求める訴えを、那覇地裁が門前払い
2020年11月15日
国会の野党議員でつくる「沖縄等米軍基地問題議員懇談会」(会長・近藤昭一衆院議員)のメンバー10名が10月17日、石垣市平得大俣で進む陸上自衛隊駐屯地建設工事現場を視察した。
沖縄での基地問題というと、米軍海兵隊の辺野古新基地建設問題に議論が集中する。その陰で、2013年12月の中期防衛力整備計画に基づいて琉球弧の島々で次々と自衛隊配備計画が進んでいることが忘れられがちである。与那国島(人口1700人)には2016年3月末、「与那国沿岸監視隊」(隊員160人、家族含200人)が発足した。さらには地対艦・地対空の誘導部隊を含めた部隊の配備が石垣島(500人)、宮古島(700~800人)、奄美大島(550人)で進められている。琉球弧が本土防衛の捨て石とされようとしているのである。
今回の野党議員の石垣訪問は、中国封じ込めのための琉球弧での自衛隊配備問題について、国民的な関心喚起に繋がるのではないかと期待される。石垣市平得大俣での陸上自衛隊配備問題については、2018年9月11日付の論座「沖縄県民は未来をだれに託すべきか」で論じたが、その後の2年間の展開を見て見よう。
2019年3月1日、沖縄防衛局は石垣市平得大俣の陸自駐屯地46ヘクタールのうち0.5ヘクタールの建設工事に着手した。前年の18年10月1日に沖縄県の改正環境影響評価条例が施行され、20ヘクタール以上の土地で造成を伴う事業をする場合には環境アセスが必要となったが、猶予期間が半年あり、適用は2019年4月1日からであった。アセスを実施することとなれば少なくとも3年程度はかかることから、国は滑り込みで着工し、アセス逃れを行ったのである。
そこで筆者は琉球大学名誉教授の渡久山章氏(陸水学)と共に、2018年8月31日と9月1日の2日間にわたって、平得大俣地区とその下流となる宮良川水系の表流水と地下水の状況について実地踏査をした。また、その結果を踏まえ、自衛隊配備がもたらす環境影響、特に水環境への影響評価を沖縄防衛局に求めるべきだと、石垣市に提言した。
宮良川の表流水・地下水は石垣市に暮らす人々の飲料水源、農業用水源となっており、その保護が極めて重要だからである。軍事基地の持つ秘密性のゆえに、どのような化学物質が流出するかを島民が容易には知ることができない恐れがあり、ひとたび汚染してしまえばそれを元に戻すのは至難の業だからだ。
当時、沖縄県の改正環境影響評価条例の適用猶予期間中に陸上自衛隊施設建設が駆け込みで着手されることが懸念されていた。そこで提言では、県条例によって法的にアセスが求められるか否かにかかわらず、石垣市政は市民の生活の安全を守る観点に立ち、施設建設に先立つ環境アセス(場合によっては自主アセス)を沖縄防衛局に求めるべきだとしたのである。
残念ながら筆者らの危惧が的中し、国はアセスを回避して工事に着手し、石垣市政はそれを容認したのである。
石垣にミサイル部隊が配備されて標的の島、軍事要塞の島となり、カンムリワシなどに象徴される貴重な自然環境が破壊され、宮良川の表流水・地下水が取り返しのつかない形で汚染されることを危惧したのは若い島民たちであった。彼らは「石垣市住民投票を求める会」をつくり、運動を展開した。代表の金城龍太郎さん(30歳、マンゴー農家)をはじめ、ハーブ農家や畜産農家、会社員などの20代を中心とする若いメンバーで構成されている。
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