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米大統領選 ——「ドラマ」の虚実

実体のない筋書きへの熱狂は、「トランプ後」の時代に何を残すのか

下條信輔 認知神経科学者、カリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授

 皮肉な話だが、こうしたドラマと熱狂は、未だに人の手でやっている選挙テクノロジーの未熟のせいだ。遅いし、確認に手間がかかる。州ごとの進度に違いが出る。全米で職場や学校がなかばストップするほどの人気長編ドラマが、そのおかげで成り立っている。

拡大ホワイトハウス周辺でバイデン氏の勝利を祝う人たち=2020年11月8日、ワシントン、ランハム裕子撮影

 「たぶん技術が進化する10〜15年後には、投票が終了した直後のナノ秒で正確な結果を出せる。そうなったらこんな空騒ぎは成り立たない」。高1の息子にそう話しかけたら、「それじゃ面白くない」と一蹴された。研究室の若手メンバーからも、「Shin、エンタテインメントに難癖つけるな、プロ野球みたいなものだ」とあっさり切り捨てられた。

 ならば「お祭り」と割り切って楽しもうとするが、それすらも困難なのは、何が事実であり何が虚偽の情報なのか、ますます掴みにくいからだ。トランプ支持者は、バイデンの息子のウクライナ・スキャンダルや大規模な選挙不正を、文字通りの「事実」としてそのリアリティー(物語)を共有する。バイデン支持者も、立場は逆だが似たり寄ったりだ。まるでふたつの人種が異なる言語を話し、異なるヴァーチャル空間に棲息している感さえある。

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筆者

下條信輔

下條信輔(しもじょう・しんすけ) 認知神経科学者、カリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授

カリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授。認知神経科学者として日米をまたにかけて活躍する。1978年東大文学部心理学科卒、マサチューセッツ工科大学でPh.D.取得。東大教養学部助教授などを経て98年から現職。著書に『サブリミナル・インパクト』(ちくま新書)『〈意識〉とは何だろうか』(講談社現代新書)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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