ホルドレン元科学技術担当大統領補佐官の講演から
2020年11月17日
オバマ元大統領が政権発足後ただちに実行したのは次のようなことだ。
① 5人のノーベル賞学者と全米アカデミーズのメンバー25人を政府の重要ポストに登用。
② 科学者の自由な発言を保障し、政策決定の根拠となる科学的データを公開することをすべての政府機関に要請。
③ 国のさまざまな問題解決には科学技術が重要であるというオバマ大統領の考えを大臣たちに共有させ、すべての大臣に自身の科学アドバイザーを任命するよう要請。
④ ホルドレン氏に、日本を含むもっとも重要な国際パートナーたちとの科学技術協力について再活性化するように指示。
これらに続き、次のようなことを実行した。
⑤ 連邦政府の研究開発予算を大幅増額。とくに生命科学、クリーンエネルギー、気候科学で顕著。
⑥ 前例のない科学技術プロジェクトをいくつも発進させた。具体的には脳科学、プレシジョン医療(個人ごとに最適化した医療のこと)、先進製造技術、先進コンピューター技術、理数系教育など。
⑦ エネルギー効率をあげる、温室効果ガスを減らす、気候変動対策を進めて途上国を支援する、自然環境を保全するといったことに対し、大統領令や規制を活用。
⑧ (気候変動対策についての多国間協定である)パリ協定の合意に向けて外交努力した。
では、トランプ大統領はどのように振る舞っただろうか。
(1) 科学技術関連の重要ポストに気候変動否定主義者や科学の素養に欠けるイデオローグを任命し、数少ない例外の人たちもトランプ氏の反科学主義に逆らう言動をしたときに追い出した。
(2) 最初の2年間にわたってOSTP局長を任命せず、大統領補佐官も任命しなかった。
(3) 連邦の研究機関の予算大幅削減を繰り返し提案(その大半は議会によって否決された)。
(4) 移民やビザのルールを変えて外国の学生にとっての米国の大学の魅力および入学しやすさを低減させ、米国で開かれる科学技術関係の国際会議に外国人が参加するのを邪魔した。
(5) パリ協定から脱退を宣言し、これに関するすべての政策(途上国支援も含む)を停止。
(6) オバマ政権によるほとんどすべての気候変動対策と規制をひっくり返した。
(7) Covid-19パンデミック対策で米国政府の公衆衛生当局のアドバイスに対し聞く耳を持たず、世界保健機関(WHO)から脱退。
(8) 連邦政府における「科学に基づいた政策」への変革を妨害。
(9) それまでの政権によって遂行されてきた国際的な科学技術協力プログラムの多くを中断もしくは無視。
見事なまでにオバマ政権の逆を行ったわけである。
さて、バイデン政権に変わるとどうなるのだろうか。
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください