メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

新型コロナ、ワクチン開発には懸念が山積み

ファイザー、モデルナが挑む世界初の「mRNAワクチン」に立ちはだかる難題

川口浩 東京脳神経センター整形外科・脊椎外科部長

 一応、これを確認するためにファイザー社に問い合わせたのだが、「お問い合わせいただきました、『94例のワクチン群とプラセボ群の内訳』および『90%以上のワクチン有効性の具体的な算出方法』につきまして、現時点でご提供可能な情報はございません。この度は先生のご要望にお応えできず、誠に申し訳ございません」というご丁寧なお返事を文書で頂いた。ルールを無視してまで世界中に誤解を招くような曖昧なメディア発表をしておいて、もっとも重要な根拠の説明ができないとする理由な何なのか?

会社トップは株売却で巨額の利益

 そう思っていたところ、9日後(11月18日)にファイザー社は「170例の感染者に達した最終分析」として、新たな発表をした。「ワクチン群8例とプラセボ群162例で、(162−8)/162 = 95.1%の有効率が示された。年齢層や人種を問わず有効で、重大な安全性の問題も生じていない」としている。11月20日に米食品医薬品局(FDA)に緊急使用許可(EUA)を申請するという。

拡大ファイザーのブーラCEOの株売却を報じるブルームバーグのサイト

 これを読んで「なんだ、自分の計算どおりで、そもそも隠すことではないんじゃないか」と思い、たった9日前に曖昧な「中間報告」をしたことへの疑惑がますます深まる。これはつまり、とにかくモデルナ社よりも先に発表することで、「世界に先駆けて」のインパクトが必要だったのではないか? そんな政治的・経済的な「オトナの事情」で医薬品開発を進めていいのか、と勘繰ってしまう。ちなみに、ファイザー社のブーラ最高経営責任者(CEO)は、「中間報告」発表当日の暴騰した株価で、持ち株の60%を売却して約560万ドル(約5億9000万円)の利益を得ているそうだ。これもまた見事なオトナの事情に見えてくる。

 後塵を拝したモデルナ社は、ファイザー社から1週間遅れた11月16日に、「臨床試験に参加した約3万人のうち95人の感染が確認され、内訳はワクチン群5例、プラセボ群90例だった」と、腹を括ったように明瞭すぎる「中間報告」をしている。有効率は(90−5)/90 = 94.4%となる。その勢い(?)で、「感染例のうち、重症例11例のすべてがプラセボ群で、ワクチン群ではゼロであった」とも述べ、今後は数週間以内に米FDAにEUA申請を目指す予定だという。

・・・ログインして読む
(残り:約3199文字/本文:約5446文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

川口浩

川口浩(かわぐち・ひろし) 東京脳神経センター整形外科・脊椎外科部長

1985年、東京大学医学部卒。医学博士。米コネチカット大学内分泌科博士研究員、東京大学医学部整形外科教室助手・講師・准教授、JCHO東京新宿メディカルセンター脊椎脊髄センター長などを経て、2018年より現職。日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医。国際関節病学会理事、日本軟骨代謝学会理事。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

川口浩の記事

もっと見る