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水産エコラベルが日本で普及し始めたからくり

豊洲市場の危機感と求められている進化

松田裕之 横浜国立大学大学院環境情報研究院教授、Pew海洋保全フェロー

拡大「マリン・エコラベル・ジャパン」のマークがついた冷蔵のベニズワイガニ=鳥取県境港市、山崎聡撮影
 東京五輪・パラリンピックと2020年度から施行された改正漁業法を契機に、水産エコラベルを扱う機運が日本の水産業界にも広がりつつある。水産エコラベルとは、環境にやさしい方法で調達された水産物を消費者が選ぶ仕組みの一つであり、国連食糧農業機構(FAO)が国際指針を定めている。国際的には海洋管理協議会(MSC)と水産養殖管理協議会(ASC)などのエコラベルが知られており、日本ではマリンエコラベル協議会(MEL)の新基準が2019年12月に国際認証を受けた。

 けれども、日本の消費者で、エコラベルがついた水産物だけ買おうという人はまだ少数だろう。鮮度、味、値段など、エコラベルと無縁の基準のほうがよほど重要なはずだ。では、どうしてエコラベルが普及しだしているのか。そのからくりを論じ、卸売市場の未来を考える。

東京五輪の選手村で、豊洲の魚が出せない?

 オリンピック大会では、ロンドン五輪から食材にエコラベル認証品だけを扱うという動きが高まり、ロンドン五輪とリオ五輪で扱う水産物はMSCとASCに限定された。東京で五輪を開くにあたり、国内ではまだMSCとASCの認証漁業が少なく、国産品がほとんど提供できないことが懸念された。結局、東京五輪では日本が作った旧基準のMELなども含めて持続可能性に配慮した独自の認証スキームを満たすものならOKとなったが、実際に何を扱うかは取引業者の判断になる。移転間もない豊洲市場の関係者には、すぐそばの五輪選手村で豊洲の魚を扱ってもらえないという危機感があったようである。

 エコラベル認証には、「漁業」、「養殖業」の生産者認証と、加工流通業者の「CoC(Chain of Custody)」認証がある。CoC認証は生産者が提供するエコラベル付き水産物が確実に消費者に届くように、加工、仲介業者が取得する認証である。途中で1つでも非認証業者が介した水産物にはエコラベルが貼れない。だから、卸売市場(図1)の大卸と仲卸、売買参加者もCoC認証をとらないと、卸売市場を通した水産物にはエコラベルを貼れないことになり、五輪選手村で売りづらくなる恐れがあった。

拡大図1:卸売市場をめぐる生鮮食料品等の主な流通経路とエコラベル志向の要請の流れ=東京都都政改革本部(2018)見える化改革報告書「既設市場の運営・整備」より。赤線、赤枠は松田の加筆。
東京都都政改革本部(2018)見える化改革報告書「既設市場の運営・整備」

欧米に輸出するにはエコラベルが必要

 政府は

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筆者

松田裕之

松田裕之(まつだ・ひろゆき) 横浜国立大学大学院環境情報研究院教授、Pew海洋保全フェロー

京都大学理学部および同大学院博士課程卒業(理学博士)、日本医科大学助手、水産庁中央水産研究所主任研究官、九州大学理学部助教授、東京大学海洋研究所助教授を経て 2003年より現職。GCOE「アジア視点の国際生態リスクマネジメント」リーダー(2007-2012)、日本生態学会元会長、日本海洋政策学会理事、個体群生態学会副会長。ヨコハマ海洋みらい都市研究会共同代表。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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