「法人化せよ」という自民党PTの提言はあまりに的外れ
2020年12月17日
法人に変えたら、政府からの独立が達成されるのか? 否である。国立大学が国立大学法人になったからといって、大学が自由に意思決定できるようになったわけではないことを見れば明らかだ。すでに実証済みの公知の事実と言っていい。それを「科学の独立性・政治的中立性を組織的に担保するため」として提言するのは、あまりに的外れと言うしかない。
日本学術会議は内閣総理大臣が所轄する政府の機関であり、なおかつ「独立して職務を行う」と法律で定められている。この設置形態は、確かにわかりにくい。2020年9月からの新会員105人のうち6人を任命しないという前代未聞の行動を菅義偉総理がとったとき、「独立して」職務を行うと定められているとはいえ国の機関なのだから総理に任命権があって当然だろうと考える人も少なくなかった。「国の機関であることがそもそもおかしい」といった声も反射的にかなり出ていたように思う。国の機関でなければ総理の任命など必要ではなく、こんな問題は起こりようがないというわけだ。
だが、この発想は本末転倒である。今回、菅総理は法律を無視した行動を取った。ご本人は内閣法制局に問題ないことを確かめたと言っているが、かつて国会で確認されたことと異なる法解釈をしているわけで、現在の国会議員や当事者である学術会議側にその変更が伝わっていない以上、総理の行動に正当性も正統性もない。しかも、日本学術会議法に「会員は210人」と書いてあるのに、現在は6人足りないまま。9月以降、違法状態が続いているのである。この状態で、「国の機関でなければこんな問題は起こらない」というのは本末転倒で、普通に考えれば「総理が法律を守っていればこんな問題は起こらない」となる。
だから、学術会議問題を考えるときの1丁目1番地は「総理大臣は法律を守りましょう」である。
それを前提としたうえで、学術会議のあり方を考えてみよう。この問題については、
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