メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

学術会議の「問題」は設置形態ではない

「法人化せよ」という自民党PTの提言はあまりに的外れ

高橋真理子 ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

学術会議のあり方を議論している自民党のプロジェクトチーム会合であいさつする塩谷立座長(中央)=2020年12月9日、自民党本部、大久保貴裕撮影
 「日本学術会議の改革に向けた提言」を自民党のプロジェクトチーム(PT)がまとめ、12月11日に井上信治・科学技術担当相に手渡した。その主旨は、内閣府の「特別な機関」という現在の設置形態を、独立した法人格を有する組織(独立行政法人や公益法人、特殊法人など)に変えるべきだというものだ。しかもそれを今から3年後、2023年9月までにやれという。

 法人に変えたら、政府からの独立が達成されるのか? 否である。国立大学が国立大学法人になったからといって、大学が自由に意思決定できるようになったわけではないことを見れば明らかだ。すでに実証済みの公知の事実と言っていい。それを「科学の独立性・政治的中立性を組織的に担保するため」として提言するのは、あまりに的外れと言うしかない。

「国の機関であることがおかしい」という声はあったが

 日本学術会議は内閣総理大臣が所轄する政府の機関であり、なおかつ「独立して職務を行う」と法律で定められている。この設置形態は、確かにわかりにくい。2020年9月からの新会員105人のうち6人を任命しないという前代未聞の行動を菅義偉総理がとったとき、「独立して」職務を行うと定められているとはいえ国の機関なのだから総理に任命権があって当然だろうと考える人も少なくなかった。「国の機関であることがそもそもおかしい」といった声も反射的にかなり出ていたように思う。国の機関でなければ総理の任命など必要ではなく、こんな問題は起こりようがないというわけだ。

日本学術会議の任命問題で6人の速やかな任命を求める共同声明を発表する学会代表ら=2020年11月6日、東京都千代田区の日本記者クラブ、北野隆一撮影

 だが、この発想は本末転倒である。今回、菅総理は法律を無視した行動を取った。ご本人は内閣法制局に問題ないことを確かめたと言っているが、かつて国会で確認されたことと異なる法解釈をしているわけで、現在の国会議員や当事者である学術会議側にその変更が伝わっていない以上、総理の行動に正当性も正統性もない。しかも、日本学術会議法に「会員は210人」と書いてあるのに、現在は6人足りないまま。9月以降、違法状態が続いているのである。この状態で、「国の機関でなければこんな問題は起こらない」というのは本末転倒で、普通に考えれば「総理が法律を守っていればこんな問題は起こらない」となる。

 だから、学術会議問題を考えるときの1丁目1番地は「総理大臣は法律を守りましょう」である。

2015年の有識者会議の報告書との共通点と異なる点

 それを前提としたうえで、学術会議のあり方を考えてみよう。この問題については、

・・・ログインして読む
(残り:約1858文字/本文:約2951文字)